土地活用の選択肢としての駐車場投資
土地を所有していると、その活用方法に頭を悩ませることがあります。
「更地のままでは固定資産税の負担が重く、かといって建物を建てるにはリスクが高すぎる」そんな悩みを抱える土地所有者にとって、駐車場投資は一つの選択肢となっています。
駐車場投資とは、所有する土地を駐車場として整備し、そこから得られる収入を目的とした投資方法です。
月極駐車場やコインパーキングなど、形態はさまざまですが、基本的には自動車の所有者に駐車スペースを提供し、その利用料を収入源とします。
この投資方法の特徴は、建物を建設する必要がないため、初期投資を抑えられることです。
また、運営や管理も比較的シンプルで、小規模な土地でも始められるという点も魅力の一つです。
しかし、駐車場投資は決して「楽して儲かる」方法ではありません。
立地条件によっては収益が見込めないケースもあり、また将来的な発展性という点では限界があります。
駐車場投資の特徴
駐車場投資には、他の不動産投資とは異なる独自の特徴があります。
ここでは、その主な特徴を3つ挙げて解説します。
(1)初期投資の少なさ
(2)運営・管理の簡単さ
(3)需要の安定性
(1)初期投資の少なさ
駐車場投資の最大の特徴は、初期投資が比較的少なくて済むことです。
マンションやオフィスビルの建設と比べると、その差は歴然としています。
駐車場の整備に必要な主な費用は、アスファルト舗装や区画線の設置、看板の設置などです。
一般的に、1台分の駐車スペースを整備するのに必要な費用は、20万円から50万円程度と言われています。
もちろん、立地や規模によって変動しますが、建物を建てる投資に比べれば、はるかに少ない金額で始められるのです。
〈主な費用〉
●整地・舗装工事費(アスファルト舗装):4,000〜5,000円/㎡
●区画線設置費(1台分あたり):5,000〜10,000円
●看板設置費(簡易な看板):20,000〜50,000円
(電光掲示板タイプ):200,000〜500,000円
●照明設備(1基あたり):50,000〜200,000円
●防犯カメラ(1台あたり):50,000〜200,000円
●車止め(1台分あたり):5,000〜15,000円
また、コインパーキングの場合は精算機の設置が必要になりますが、最近では駐車場運営会社がリースで提供するケースも増えており、初期費用を抑える工夫ができます。
参考:機器レンタル | コインパーキング・駐車場の経営で土地活用をお考えならパークレポへ
(2)運営・管理の簡易さ
駐車場の運営・管理は、他の不動産投資と比べて比較的簡単です。
月極駐車場の場合、基本的に契約者が決まれば、あとは月々の支払いを確認するだけです。
コインパーキングでは、精算機のメンテナンスや売上金の回収が必要になりますが、これらの業務を専門の管理会社に委託することも可能です。
また、建物と違って駐車場は劣化が少ないため、大規模な修繕や設備の更新などにかかる手間やコストも抑えられます。
除草や積雪時の除雪など、一定の管理は必要ですが、アパートやマンションの運営と比べれば、はるかに手間がかかりません。
(3)需要の安定性
駐車場の需要は、比較的安定しているのが特徴です。
特に都市部では、慢性的な駐車場不足が続いています。
自動車保有台数の増加に対して、駐車場の供給が追いついていないのが現状です。
出典:1.調査目的等 2.コイン式駐車場の定義 3.コイン式駐車場市場規模 4.全国管理車室数
日本ビジネスパーキング協会によると、調査を始めた2007年から2020年までの13年でコイン式駐車場の箇所数は約2.8倍、車室数は約2.3倍と増加しました。
支払い方法の多様化やカーシェアリングとの併用などによって今後はより効率的に駐車場を運営できるのではないかと考えられます。
ただし、駐車場の需要は立地に大きく左右される点に注意が必要です。
住宅地や商業地域など、人の動きが活発な場所では安定した需要が見込めますが、郊外や人口減少が進む地域では、需要が限られる可能性もあります。
駐車場投資のメリットとデメリット
駐車場投資の特徴をより深く理解するため、そのメリットとデメリットをさらに詳しく解説していきます。
駐車場投資のメリット
メリットは駐車場投資の特徴でも触れていますが、具体的に受けられる恩恵として以下の3つが挙げられます。
(1)予測しやすいキャッシュフロー
(2)土地の暫定利用
(3)多様な運営方法
(1)予測しやすいキャッシュフロー
駐車場投資は、他の不動産投資と比べて収支の予測が立てやすいのが特徴です。
月極駐車場の場合、契約者が決まれば毎月一定の収入が見込めます。
コインパーキングでも、立地条件さえ良ければ、季節変動はあるものの比較的安定した収入が期待できます。
この予測のしやすさは、投資計画を立てる上で大きな利点となります。
(2)土地の暫定利用
将来的に別の用途で活用する予定の土地でも、その間の有効活用として駐車場投資は適しています。
建物を建てる場合と異なり、駐車場は比較的容易に他の用途に転換できます。
例えば、数年後に商業施設を建設する予定の土地でも、その間駐車場として運用することで、土地の遊休化を防ぎつつ収益を得ることができます。
(3)多様な運営方法
駐車場投資では、月極、時間貸し、コインパーキングなど、様々な運営方法を選択できます。
さらに、カーシェアリングやレンタカー事業者へのスペース貸しなど、新たなビジネスモデルとの連携も可能です。
この柔軟性により、市場の変化や地域のニーズに応じて運営方法を最適化できます。
駐車場投資のデメリット
駐車場投資は特に運用の手軽さからメリットを得ることができますが、もちろんデメリットも存在します。主なデメリットは以下の4つです。
(1)収益性の低さ
(2)価値の向上の難しさ
(3)税制面で不利
(4)土地の有効活用度の低さ
(1)収益性の低さ
駐車場投資の最大の弱点は、収益性に明確な上限があることです。
例えば、月極駐車場で1台分の駐車スペースから得られる収入は、一般的に月額1〜3万円程度です。
土地の広さや立地によって総収入は変わりますが、1㎡あたりの収益性では、アパートやマンション投資と比べると劣ります。
出典:駐車場経営の利回りの目安とは?相場や計算方法、安定した収益につながる運営方法まで徹底解説 | フィル・パークマガジン
(2)価値の向上の難しさ
建物と違い、駐車場は時間の経過とともに価値が上がることは稀です。
むしろ、周辺環境の変化によっては価値が下がるリスクもあります。
例えば、近隣に大型商業施設の駐車場ができれば、需要が急減する可能性があります。
この点で、リノベーションなどで価値を高められる建物投資とは大きく異なります。
(3)税制面で不利
駐車場経営は賃貸住宅経営と比較して、税制上のメリットが少ないです。
例えば、土地を持っているだけでかかる固定資産税と都市計画税について、賃貸住宅経営の場合では「住宅用地の特例」が適用されることによって、固定資産税は最大で1/6、都市計画税は最大で1/3に評価額が減額されます。
しかし、駐車場経営の場合、その土地は「更地」扱いとなる為、この特例が適用されず税負担の軽減がありません。
出典:固定資産税・都市計画税(土地・家屋) | 都税Q&A | 東京都主税局
(4)土地の有効活用度の低さ
駐車場は、土地の潜在的な可能性を最大限に活かしているとは言えません。
特に都市部の高地価エリアでは、駐車場よりも高層ビルや複合施設を建設するほうが、はるかに高い収益を見込めます。
このため、将来的な機会損失を考慮する必要があります。
以上のように、駐車場投資には独自のメリットとデメリットがあります。
投資判断を行う際は、これらを十分に理解し、自身の投資目的や財務状況、リスク許容度と照らし合わせて慎重に検討することが重要です。
特に、長期的な視点での収益性や将来のリスクについては、他の投資選択肢と比較しながら評価する必要があります。
マンション投資との収益性比較シミュレーション
不動産投資には様々な選択肢がありますが、ここでは特に一般的なマンション投資と駐車場投資を比較し、それぞれの特徴を見ていきます。
(1)初期投資額
【駐車場投資】東京都内の住宅街で50㎡の土地を所有していると仮定します。
●土地代:既に所有しているため0円
●整備費用:アスファルト舗装、区画線、看板設置で約250万円(5台分、1台あたり50万円)
●合計:約250万円
【マンション投資】同じ場所で5階建てのワンルームマンション(10戸)を建設すると仮定します。
●土地代:既に所有しているため0円
●建築費:1億5000万円(1戸あたり1500万円で計算)
●合計:1億5000万円
(2)年間収益率
【駐車場投資】
●収入:5台×月3万円×12ヶ月 = 180万円/年
●経費:固定資産税など36万円/年(収入の20%と仮定)
●純利益:144万円/年
●収益率:144万円 ÷ 250万円 = 57.6%(ただし、土地代を含めると大幅に下がります)
【マンション投資】
●収入:10戸×月8万円×12ヶ月 = 960万円/年
●経費:管理費、修繕費など384万円/年(収入の40%と仮定)
●純利益:576万円/年
●収益率:576万円 ÷ 1億5000万円 = 3.84%
(3)収益の安定性
【駐車場投資】
月極め契約で5台全て埋まっている場合、毎月15万円の安定収入を得られます。
1台空きが出ても、月12万円の収入は確保できます。
【マンション投資】
10戸全て埋まっている場合、毎月80万円の収入になります。
しかし、2戸空室になると月64万円に減少します。
さらに、入居者の入れ替わりで1ヶ月空室になることもあり、その場合は56万円まで減少してしまいます。
(4)経費率
【駐車場投資】
年間収入180万円に対し、経費は36万円(20%)
主な経費は固定資産税、軽微な補修費、除草費用などです。
【マンション投資】
年間収入960万円に対し、経費は384万円(40%)
主な経費は固定資産税、管理費、修繕積立金、火災保険料、定期的な大規模修繕費などです。
これらの数字から、駐車場投資は初期投資が少なく、安定した収入が見込めるものの、総収入額ではマンション投資に及ばないことが分かります。
一方、マンション投資は大きな収入が期待できますが、初期投資も経費も大きく、収益の変動リスクも高いことが理解できます。
投資家は自身の資金力やリスク許容度に応じて、適切な投資方法を選択することが重要です。
駐車場投資が適している場合
駐車場投資は万能の投資方法ではありませんが、特定の状況下では非常に有効な選択肢となります。
ここでは、駐車場投資が特に適している3つのケースを詳しく見ていきましょう。
(1)小規模な遊休地の活用
駐車場投資は、小さな遊休地を効果的に活用する手段として優れています。
【具体例】
太郎さんは、祖父から相続した50㎡の土地を持っています。
この土地は住宅街にありますが、家を建てるには狭すぎます。
しかし、駐車場なら3台分のスペースが確保できます。
【メリット】
●土地の有効活用:これまで税金だけがかかっていた土地が収入を生み出す資産に変わります。
●低コストでの開始:アスファルト舗装と区画線の設置だけで始められるため、初期投資を抑えられます。
●管理の容易さ:小規模なので、太郎さん自身で簡単に管理できます。
このように、建物を建てるには適さない小さな土地でも、駐車場として活用することで収益を上げることができます。
(2)一時的な土地利用として
将来的に別の用途で使用する予定がある土地でも、その間駐車場として活用することで収益を得られます。
【具体例】
花子さんは、5年後に店舗を建設する予定の土地を所有しています。
しかし、それまでの間、その土地は遊休状態になってしまいます。
【メリット】
●収益の創出:店舗建設までの「つなぎ」として収入を得られます。
●流動性:駐車場は比較的簡単に他の用途に転換できるため、予定が変更になっても対応しやすいです。
このように、駐車場投資は土地の暫定利用として最適な選択肢の一つとなります。
(3)リスク許容度の低い投資家向け
安定した収入を求め、大きなリスクを取りたくない投資家にとって、駐車場投資は適しています。
【具体例】
定年退職した次郎さんは、退職金の一部で不動産投資を考えていますが、大きなリスクは避けたいと考えています。
【メリット】
●安定した収入:特に月極駐車場の場合、契約さえ決まれば安定した収入が見込めます。
●低いランニングコスト:建物の維持管理費用がかからないため、経費が少なく済みます。
●予測しやすい収支:収入と支出が比較的安定しているため、将来の資金計画が立てやすいです。
このように、駐車場投資は初心者や保守的な投資家にとって、リスクの低い投資選択肢となります。
まとめ「土地所有者にとっての駐車場投資」
駐車場投資は、土地所有者にとって魅力的な選択肢の一つですが、万能の解決策ではありません。
駐車場投資の特徴を整理すると以下のようになります。
●初期投資が少なく、運営管理が比較的簡単
●安定した需要が見込める一方で、収益性には上限がある
●小規模な遊休地や一時的な土地利用に適している
●リスク許容度の低い投資家にとって、安定した選択肢となる
しかし、税制面での不利や将来的な価値向上の難しさなど、デメリットも存在します。
駐車場投資を検討する際は、以下の点を十分に考慮することが重要です。
●土地の立地条件と周辺の駐車場需要
●長期的な土地利用計画との整合性
●他の投資選択肢(マンション投資など)との比較
●自身の財務状況とリスク許容度
最終的には、各個人の状況や目的に応じて、駐車場投資が適切な選択肢となるかを慎重に判断する必要があります。
専門家のアドバイスを受けながら、長期的な視点で土地活用の方針を決定することをおすすめします。
駐車場投資は、特定の状況下では有効な土地活用方法となる可能性がありますが、それぞれの土地所有者が自身の状況を冷静に分析し、最適な選択をすることが成功への鍵となるでしょう。
不動産投資の選択肢としておすすめしているのが、不動産クラウドファンディングです。
以下の記事では不動産クラウドファンディングの特徴と他の不動産投資との違いについて解説しています。
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