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シニア向け不動産投資の実態~成長市場で知っておくべき特徴とリスク~

2025.01.10

コラム記事184のメイン画像 不動産投資

高齢化が急速に進む日本において、シニア向け不動産市場は着実な成長を続けています。内閣府の「令和6年版高齢社会白書」によると、2023年10月1日時点で65歳以上の高齢者人口は3,623万人、総人口に占める割合(高齢化率)は29.1%に達しています。この比率は今後も上昇を続け、2025年には30%を超えると予測されています。 この記事では、シニア向け不動産市場の現状と将来性について、最新のデータと具体的な分析を交えながら解説します。不動産投資に関心を持つサラリーマンの皆様に、この成長市場の可能性についてお伝えします。


シニア向け不動産市場の現状

シニア向け不動産市場は、高齢化の進展とともに多様化が進んでいます。

かつての高齢者施設は介護を必要とする方向けの画一的なものでしたが、現在では元気な高齢者向けの住宅から医療的ケアが必要な方向けの施設まで、様々なタイプが存在します。

まずは、この市場を構成する主な施設タイプとその特徴を理解することから始めましょう。

 

 

高齢者向け住宅・施設の全体像

国土交通省がまとめた「高齢者の住まいについて」によると、高齢者向け住宅・施設は大きく以下の2つのカテゴリーに分類されます。

 

① 介護保険施設(医療・介護サービスを提供する入所施設)

高齢者向け施設の種類と概要

出典:サービス付き高齢者向け住宅について -高齢者の住まいについて-

 

●介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム):要介護高齢者のための生活施設。2015年度より原則要介護3以上が入所対象

●介護老人保健施設:要介護高齢者にリハビリ等を提供し、在宅復帰を目指す施設

●介護医療院:要介護高齢者の長期療養・生活施設

●介護療養型医療施設:医療の必要な要介護高齢者のための長期療養施設

 

 

② 高齢者向け住まい(生活の場としての住居)

高齢者向け住まいの種類・概要

出典:サービス付き高齢者向け住宅について -高齢者の住まいについて-

 

●サービス付き高齢者向け住宅:60歳以上の高齢者を対象とし、安否確認や生活相談サービスを提供する住宅

●有料老人ホーム:食事や介護などのサービスを提供する高齢者向けの居住施設

●養護老人ホーム:環境的、経済的に困窮した高齢者の入所施設

●軽費老人ホーム:低所得高齢者のための住居

●認知症高齢者グループホーム:認知症高齢者のための共同生活住居

 

 

③ その他の高齢者向け住宅(自立した生活が可能な方向け)

●シニア向け分譲マンション:バリアフリー設計等の高齢者向け仕様を備えた一般分譲マンション

●高齢者向け優良賃貸住宅:バリアフリー化され、緊急時対応サービス等を備えた賃貸住宅

 

各施設は、提供するサービスの内容、対象者、設置・運営主体が異なり、高齢者の状態や必要なケアの程度に応じて選択できるようになっています。

 

 

市場規模と需給バランス

高齢者向け住宅・施設の総定員数は2023年4月集計時点で約234万人分となっています。

しかし、これは要介護・要支援者の総数約691万人(2023年5月末時点)の半分にも満たない状況です。

この需給ギャップは、地域によって大きく異なります。

 

 

都市部の状況

東京都では、特に施設不足が深刻な状況が続いています。

2023年3月末時点で、特別養護老人ホームへの入所待機者は約3.6万人にのぼります。

この深刻な待機者問題の背景には、都市部特有の課題があります。

 

まず、都心部の地価高騰により、新規施設の開発が困難です。

土地取得費が地方の数倍にも達するため、事業者は新規参入を躊躇せざるを得ません。

その結果、必要な施設の供給が限定的となり、需給バランスの悪化を引き起こしています。

 

東京都のサービス付き高齢者向け住宅の相場

出典:【11/20更新】東京都のサービス付き高齢者向け住宅一覧 空室121件|みんなの介護

 

さらに、こうした高額な土地取得費は運営コストに反映され、例えばサービス付き高齢者向け住宅の平均月額利用料は30万円前後と、地方の1.5倍程度の水準になっています。

このように、都市部における施設不足は、地価高騰を起点とした構造的な問題となっているのです。

 

 

地方部の状況

対照的に、地方部では都市部とは異なる課題に直面しています。

地方では施設の整備は比較的進んでおり、必要な供給量は確保されています。

しかし、人口減少が急速に進む中で、施設への入居需要も減少傾向にあります。

 

この需要減少の影響は既に顕在化しており、有料老人ホームでは平均入居率が80%を下回る地域も出現しています。

入居率の低下は施設の収益を直撃し、経営の継続が困難になるケースも増加しています。

 

このように、地方部では供給過多と経営の持続可能性が大きな課題となっているのです。

 

 

入居者ニーズの変化

近年の高齢者は、単なる「住まい」以上のものを求めています。

 

 

医療ケアの充実

医療機関との連携や24時間の介護体制など、医療・介護サービスの充実度が入居検討の重要な判断基準となっています。

特に、医療機関が併設・隣接する施設や、24時間看護師が常駐する施設への関心が高まっています。

 

 

アクティブシニアへの対応

65〜74歳の前期高齢者を中心に、アクティブな生活を支援する機能が求められています。

図書室やフィットネス施設などの共用施設の充実度や、趣味の活動ができる場所の有無が、施設選びの重要な要素となっています。

 

 

居住形態の多様化

単身者向けの居室だけでなく、夫婦で入居できる広めの居室や、キッチン付きの居室など、より自由度の高い居住空間への需要が高まっています。

また、プライバシーを保ちながら入居者同士が交流できる共用スペースの設置など、コミュニティ形成を意識した施設づくりが進んでいます。

 

このように、高齢者向け住宅市場は、多様化する入居者ニーズに応えながら、地域ごとの需給バランスの課題に直面しています。

 

 

シニア向け不動産の主な投資対象

高齢者向け住宅・施設の中でも、特に投資対象として注目を集めているのが「サービス付き高齢者向け住宅」と「有料老人ホーム」です。

それぞれの投資特性について、見ていきましょう。

 

 

サービス付き高齢者向け住宅の投資特性

サービス付き高齢者向け住宅の制度概要

出典:サービス付き高齢者向け住宅について -高齢者の住まいについて-

 

① 長期安定収入が期待できる

一般の賃貸住宅と異なり、入居者の頻繁な入れ替わりが少ないことが特徴です。

国土交通省の整備基準に従った設計・設備が求められるため、一般賃貸より建設コストは高くなりますが、その分、入居費用(家賃、サービス費等)も安定的に見込むことができます。

 

 

② 補助金の活用が可能

国土交通省のサービス付き高齢者向け住宅整備事業では、建設費の一部に対する補助制度があります。また、自治体独自の整備費補助制度も用意されています。

これらの補助金を活用することで、初期投資の負担を軽減できます。

 

 

③ 運営方式の選択肢

投資家は以下の運営方式から選択できます。

●自社での運営:収益性は高いが、運営ノウハウと人材確保が必要

●運営会社への一括賃貸:安定した賃料収入が得られる一方、収益は限定的

 

 

有料老人ホームの投資特性

有料老人ホームの種別

出典:有料老人ホームとは?入居条件や種類別の特徴、入居するまでの流れを徹底解説

 

① 介護付有料老人ホーム

介護付有料老人ホームは、入居者の家賃収入に加えて、介護報酬による安定した収入が見込める施設です。

しかし、施設の運営には介護福祉士などの専門資格を持つ人材の確保が必要不可欠です。

 

また、介護報酬は介護保険制度の改定の影響を直接受けるため、制度変更のリスクも考慮する必要があります。

 

 

② 住宅型有料老人ホーム

住宅型有料老人ホームは、基本的に不動産賃貸としての収入構造を持つ施設です。

介護サービスは外部の事業者と連携して提供するため、施設運営における自由度が比較的高いのが特徴です。

 

ただし、入居者に適切な介護サービスを提供するためには、地域の介護サービス事業者との良好な関係構築が重要となってきます。

このように、建物を所有する投資家の立場からは、一般的な賃貸住宅に近い事業形態といえます。

 

 

③ 健康型有料老人ホーム

健康型有料老人ホームは、自立した生活が可能な健康な高齢者のみを対象とする施設です。

介護が必要になった場合は退去が原則となるため、入居者の入れ替わりリスクを考慮する必要があります。

 

一方で、介護サービスの提供が不要なため、運営は比較的シンプルです。

収入は家賃と食事等の基本サービス料が中心となり、介護保険制度の影響を直接受けることはありません。

 

ただし、介護が必要になった場合の退去規定があるため、入居者確保の面では他の類型と比べて制限が大きくなる可能性があります。

 

 

シニア向け不動産投資のリスクと対策

シニア向け不動産投資には、一般の不動産投資とは異なる独自のリスクが存在します。

これらのリスクを理解し、適切な対策を講じることが、投資の成功には不可欠です。

 

 

政策・制度変更のリスク

高齢者向け住宅・施設は、介護保険制度や建築基準法などの法規制の影響を大きく受けます。

介護報酬の改定や施設基準の変更は、事業の収益性に直接影響を与える可能性があります。

 

特に介護付き有料老人ホームは、介護保険制度の改定の影響を受けやすい特徴があります。

2024年度の介護報酬改定では、介護職員の処遇改善や人材確保の取り組みが重視されており、運営コストの上昇が予想されます。

 

 

運営リスク

高齢者向け施設の運営は、一般の賃貸住宅とは比較にならないほど専門性が求められます。

運営会社の経営状態や運営能力は、投資の成否を大きく左右します。

運営会社の突然の撤退や、サービス品質の低下は、施設の評判を損ね、入居率の低下につながる可能性があります。

 

一括借り上げ方式の場合でも、運営会社の経営破綻リスクには注意が必要です。

近年では人材不足も深刻な課題となっており、特に介護職員の確保が運営上の大きな課題となっています。

 

 

市場リスク

地域の高齢者人口の変動や、競合施設の増加は、入居率に大きな影響を与えます。

都市部と地方部では、異なる市場リスクが存在します。

地方部では人口減少に伴う需要低下が深刻な課題となっており、施設の過剰供給による競争激化が懸念されます。

 

一方、都市部では高額な土地取得費用が事業収支を圧迫する要因となっており、収益性の確保が課題です。

 

これらのリスクは、投資判断の重要な要素となります。

特に、地域特性に応じたリスク評価と、長期的な市場動向の分析が重要です。

 

 

これからのシニア向け不動産投資

シニア向け不動産投資市場は、日本の高齢化の進展とともに確実な成長が期待される分野です。

2025年には高齢化率が30%を超えると予測される中、高齢者向け住宅・施設への需要は今後も継続的に高まっていくでしょう。

 

しかし、この市場への投資は、地域による大きな需給格差を考慮する必要があります。

都市部では施設不足が続く一方、地方部では過剰供給の懸念があり、立地選定が投資の成否を大きく左右します。

 

投資対象としては、サービス付き高齢者向け住宅と有料老人ホームが代表的です。

サービス付き高齢者向け住宅は、補助金の活用が可能で、長期安定的な収入が期待できます。

一方、有料老人ホームは、タイプによって収益構造が異なり、介護付きは介護報酬による安定収入が見込める反面、制度変更の影響を受けやすいという特徴があります。

 

高齢者向け住宅・施設への投資は、一般の不動産投資とは異なる専門性とリスク管理が求められます。

政策・制度変更のリスク、運営リスク、市場リスクなど、独自のリスク要因を十分に理解した上で、投資判断を行うことが重要です。

 

このように、シニア向け不動産投資は、課題とリスクを伴う一方で、社会的ニーズに応える成長市場としての大きな可能性を秘めています。

人口動態や制度変更、入居者ニーズの変化など、市場環境の変化を注視しながら、長期的な視点での投資戦略が求められるでしょう。

 

以下の記事では、高齢化社会において、シニア向け不動産の市場以外にも不動産投資を成功させる対策について解説しています。

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