資産配分の不動産割合は自宅を入れて数える
資産配分のなかで不動産をどれくらい持つべきかを考えるとき、先に確かめておきたいことがあります。今の自分がすでに不動産をどれだけ持っているか、という点です。
多くの解説は、投資用の物件だけを不動産として数えます。ただ、自宅を買った人にとって、その家と土地は資産のなかで大きな部分を占めます。ここを数に入れないまま割合を考えると、実態からずれた判断になります。
(1)平均世帯は純資産の3分の2が住宅と宅地
日本の世帯が持つ資産のうち、住宅と宅地はおよそ3分の2を占めています。
出典:令和6年全国家計構造調査
2026年8月28日に公表された総務省統計局の令和6年全国家計構造調査によると、総世帯の純資産総額は1世帯あたり3,156.5万円でした。内訳は宅地資産が52.8%、預貯金などから借入金を差し引いた純金融資産が33.4%、住宅資産が13.8%です。住宅と宅地を合わせると66.6%になります。
つまり平均的な世帯は、不動産を投資対象として意識する以前から、資産の3分の2が不動産という状態にあります。この土台を知らずに割合の目安だけを探しても、自分に当てはめる基準が定まりません。
(2)投資用だけを見ると割合を読み違える

出典:令和6年全国家計構造調査
不動産の内訳をさらに見ると、現在住んでいる家と土地が純資産の57.7%を占めます。一方、現住居以外の不動産は9.0%にとどまります。
一般的な世帯にとって、不動産の中心は自宅です。投資用の物件だけを数えて自分の不動産割合をゼロと判断すると、すでに6割近くを不動産に振り向けている事実を見落とします。逆に、賃貸で暮らしている人は割合がゼロなので、同じ目安をそのまま当てはめることはできません。
なお、この調査の住宅と宅地の金額は実際の売却価格ではありません。国土交通省の地価公示などをもとに、敷地面積や延べ床面積から推計した評価額です。目安として使う数字だと理解しておくと、自分の家に当てはめるときに迷いません。
自分の不動産割合を計算する手順
平均の数字がわかっても、判断に使えるのは自分の数字です。手元の情報だけで計算できるので、順番に見ていきます。
用意するものは次の4つです。
1. 自宅の評価額
2. 預貯金や投資信託などの金融資産の合計
3. 住宅ローンの残高
4. 自宅以外に持っている不動産があれば、その評価額
自宅の評価額は、固定資産税の納税通知書に記載された評価額や、国土交通省が公表する地価公示などから見当をつけられます。公示地価や路線価など複数の価格があって迷いやすいところなので、調べ方は別の記事で詳しく解説しています。

(1)総資産ベースと純資産ベースの2通りで出す
数字がそろったら、割合を2通りで計算します。
1. 総資産ベース…不動産の評価額を、金融資産と不動産の合計で割ります。
2. 純資産ベース…不動産の評価額から住宅ローン残高を引いた金額を、住宅ローンを含むすべての負債を差し引いた資産の合計で割ります。
出典:令和6年全国家計構造調査
家計構造調査の数値で計算すると、この2つの差がはっきり出ます。30歳代の場合、住宅と宅地の1,366.9万円を総資産2,117.9万円で割ると64.5%です。一方、住宅ローンを引いた431.8万円を純資産1,117.3万円で割ると38.6%まで下がります。40歳代は64.2%と49.2%でした。

総資産ベースは、自分の資産がどれだけ不動産という形に偏っているかを表します。純資産ベースは、ローンを返し終えたときに手元に残る不動産の量を表します。両方を出しておくと、偏りの度合いと返済の進み具合を分けて把握できます。
(2)30歳代と40歳代で数字の意味が変わる理由
総資産ベースで見ると、30歳代も40歳代もどちらも64%台でほぼ同じです。ところが純資産ベースでは10ポイント以上の差がつきます。
差を生んでいるのは住宅ローンです。同じ調査によると、金融負債残高に占める住宅・土地のための負債の割合は、30歳代で93.5%、40歳代で92.8%と9割を超えています。この年代の借入金は、ほとんどが住宅ローンです。
出典:令和6年全国家計構造調査
住宅を取得した直後の30歳代は、家という資産を持つと同時に、ほぼ同額の負債も抱えています。実際、30歳代の純金融資産はマイナス249.6万円で、全年代のなかで唯一のマイナスでした。資産の額面だけを見ると不動産に偏っているように映りますが、正味の保有量はまだ小さい段階にあります。
40歳代になると返済が進み、正味の不動産が増えていきます。同じ64%という数字でも、置かれている状況は違います。自分がどちらに近いかで、次に取る行動も変わってきます。
年代とローンの有無で変わる割合の目安
自分の割合が出たら、次は上げるか下げるかの判断です。ここには唯一の正解がありません。持ち家か賃貸かで、考える方向がそもそも逆になります。
出典:令和6年全国家計構造調査
その前にひとつ注意があります。これまで挙げてきた数字は平均値です。同じ調査で純資産総額の中央値は1,622万円で、平均値3,156.5万円のおよそ半分でした。一部の資産の多い世帯が平均を押し上げているため、平均と比べて少ないことを気にしすぎる必要はありません。
(1)持ち家がある人は割合を下げる側から考える
自宅を持っている人は、すでに資産の6割前後が不動産という状態からの出発です。この場合、不動産をさらに増やす前に考えたいのは、金融資産の側を厚くすることです。
理由は集中の度合いにあります。自宅は特定の地域の一物件です。その地域の地価が下がれば資産が減り、同時に自分の住む場所の環境も変わります。値動きの原因が重なっているぶん、他の資産で補いにくい形になっています。
金融資産側の組み立て方については、制度ごとの役割を整理した記事があります。

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(2)賃貸の人は現金の置き場所から考える
賃貸で暮らしている人の不動産割合は、文字どおりゼロです。増やす余地は大きいものの、先に確かめておきたいことがあります。手元の現金をどこに置くかという順番の問題です。
不動産に関わる商品は、株式のようにいつでも売れるわけではありません。現物の物件は買い手を探す必要があり、クラウドファンディングは運用期間が終わるまで原則として途中解約ができません。急な出費に備えるお金は、これらに回さず預貯金で確保しておきます。
家計全体で見ても、金融資産の60.2%は預貯金です。ただし金融資産を持つ世帯の中央値は728万円で、平均値の1,527.2万円とは開きがあります。まず生活費の数か月分を預貯金として残し、そのうえで残った資金の置き場所を考える順序になります。
不動産の割合を無理なく調整する2つの方法
不動産の割合を上げたいと考えたとき、選べる方法は物件を買うことだけではありません。少額から出資できる不動産クラウドファンディングという方法もあります。
どちらも資金を不動産に向ける点では同じです。ただ、必要な金額と手間には大きな差があります。
(1)現物とクラウドファンディングの負担の違い
まず、始めるときの費用です。物件を買う場合、価格のほかに税金と手数料がかかります。不動産取得税は本則4%のところ、土地と住宅の取得については2027年3月31日まで3%に軽減されています。登記の際の登録免許税は、土地の所有権移転が本則2.0%のところ2029年3月31日まで1.5%に引き下げられています。
仲介会社を通す場合の手数料にも上限があります。売買代金が400万円を超える場合は、代金の3%に6万円を加えた額と、その消費税を合わせた金額が上限です。
主な違いを並べると次のようになります。

期間の違いは統計にも表れています。国土交通省の調査によると、クラウドファンディングの商品は運用期間が1年未満のものが中心です。一方、それ以外の同じ制度にもとづく商品では、5年を超えるものが65%を占めています。

不動産クラウドファンディングと現物・J-REITの違いとは?
(2)少額で割合を刻む場合の確認事項
1万円から出資できると、不動産の割合を細かく調整できます。そのうえで確かめておきたい仕組みがあります。
多くのサービスが採用している優先劣後方式です。投資家が優先出資、事業者が劣後出資を担い、損失が出た場合はまず劣後出資から充てられます。損失が劣後出資の範囲に収まる限り、優先出資の元本に損失は及びません。ただし劣後出資を超える損失が生じた場合は優先出資の元本も減るため、元本が保証される仕組みではありません。
実際の条件も見ておきます。福岡市の物件を対象とするえんfundingの場合、2026年9月4日時点で確認できる直近の7件は、予定分配率が年3.0%から3.4%でした。運用期間は6か月または12か月です。募集は抽選方式で、この7件の応募率は138%から190%です。申し込んでも必ず出資できるとは限りません。

不動産クラウドファンディングのシミュレーション|10万円投資の手取りとリスク【会社員必見】
自分の数字から始める資産配分の見直し
資産配分における不動産の割合は、一律の正解を探すよりも、自分の現在地を数字にするところから始まります。自宅を含めて数えると、多くの人が思っていたより高い割合になっているはずです。
最後に要点を振り返ります。
●不動産の割合は自宅を含めて数える。総世帯の平均では純資産の66.6%が住宅と宅地
●総資産ベースと純資産ベースの2通りで計算すると、住宅ローンの影響が見える
●割合を動かす手段は物件の購入だけではなく、必要な額と手間の異なる選択肢がある
用意するものは、固定資産税の納税通知書と預貯金の残高がわかるものだけです。計算は30分ほどで終わります。
数字が出たら、増やす側と減らす側のどちらへ動かすかを決めてください。方向さえ決まれば、出せる金額も許容できる手間も自然に絞り込めます。年内に一度自分の数字を持っておけば、次に迷ったときも同じ基準で判断できます。割合の目安を探し続けるより、そのほうが着実に前へ進めます。

