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不動産STとは?仕組みと3つの注意点をわかりやすく解説

2026.08.25

コラム記事261のメイン画像 不動産投資

不動産STという言葉をニュースで見かけたものの、不動産クラウドファンディングや現物の不動産投資と何が違うのか、はっきりしないという方は少なくありません。不動産STは不動産を小口に分けたデジタル証券で、金融商品取引法に基づく有価証券として扱われます。この記事では、仕組みと市場の現状、他の3つの投資方法との違い、始める前に確認したい注意点をお伝えします。


不動産STとは?不動産を小口にしたデジタル証券の仕組み

不動産STとは、ブロックチェーンなどのデジタル技術を活用して不動産を小口化し、証券として発行・管理する新しい投資商品(デジタル証券)です。STは、Security Tokenの略です。

 

証券会社のサイトでは不動産STOという表記も登場します。STOはSecurity Token Offeringの略で、不動産STを発行する手法という関係です。

 

不動産ST市場規模出典:不動産STにおける市場規模は堅調に拡大、2025年度は拡大がさらに加速する可能性も|レポート・コラム【株式会社三井住友トラスト基礎研究所】

 

国内で最初の不動産STが発行されたのは2021年7~8月で、まだ歴史の浅い商品です。

 

 

(1)不動産の権利を小口に分けたデジタル証券

不動産STは、1棟で数十億円する不動産を多数の口数に分け、投資家が持ち分に応じて収益を受け取る商品です。

 

1口あたりの金額を下げることで、個人でも大型の物件に関われます。受け取るお金は、賃料収入と運用が終わったときの売却の結果によって決まります。

 

大阪堂島浜タワー

出典:取扱実績|野村の不動産セキュリティ・トークン

 

野村證券が2026年に取り扱ったMUFGリアルティ・トークン大阪堂島浜タワーは、発行価格の総額が224億円でした。

 

ブロックチェーンが担うのは、誰が何口を持っているかという記録と移転の管理です。情報の更新が効率化され、多くの投資家に小口で商品を届けられるようになりました。

 

 

(2)不動産STは暗号資産とは別物で金融商品取引法の対象

名前にトークンという言葉が入るため混同されやすいのですが、不動産STは暗号資産とは別の枠組みで扱われます。

 

2020年5月に施行された改正金融商品取引法で、ブロックチェーンを使って発行される有価証券の扱いが整理されました。不動産STはこの法律上の有価証券に位置づけられています(金融庁の研究会議事録、2026年7月時点)。

 

販売や勧誘を行う証券会社には、株式や社債と同じルールが適用されます。取引時の本人確認や重要な事項の説明も義務づけられています(日本STO協会提出資料、金融庁サイト掲載)。

 

暗号資産には裏付けとなる資産がなく、価格は需要と供給で動きます。不動産STの原資は、特定の不動産が生む賃料収入と売却代金です。

 

ただし、これらのルールは投資家を保護する手続きを定めたもので、元本を保証するものではありません。運用の結果によっては、投資した金額を下回ることがあります。不動産STが上場されている有価証券ではない点も、株式との違いです。

 

 

ブロックチェーンの仕組みは、以下の記事で説明しています。

 

初心者にもやさしいブロックチェーン解説!まずは歴史や仕組みを理解しよう。初心者にもやさしいブロックチェーン解説!まずは歴史や仕組みを理解しよう。

 

 

日本で買える不動産STと最低投資額の実際

不動産STの市場は、この数年で規模が拡大しています。

 

ST案件運用金額推移(残高)

 

ST案件発行金額推移(累計)

出典:Concept|【Progmat】デジタルアセットプラットフォーム

 

デジタル証券の基盤を提供するProgmatによると、2026年8月時点で国内のセキュリティ・トークンの案件の運用残高は7,432億円超、発行累計額は3,970億円超です。

 

これは債券なども含めたセキュリティ・トークン全体の数字で、不動産だけを取り出したものではありません。それでも、短い期間で市場が立ち上がったことは読み取れます。

 

 

(1)主な取り扱い事業者

不動産STには、商品を作る運用会社と、それを売る証券会社という2つの立場が関わります。

 

運用会社には、ケネディクス、三井物産デジタル・アセットマネジメント、三菱UFJ不動産投資顧問、いちご投資顧問などが名を連ねています。

 

販売する証券会社は、野村證券、SBI証券、大和証券、SMBC日興証券、東海東京証券などです(各社公式サイト、2026年7月時点)。

 

商品を選ぶときは、証券会社だけでなく、どの運用会社がどの物件を扱うかも確認することになります。

 

 

(2)最低投資額は10万円から100万円が中心

不動産STは数万円から買えると説明されることがありますが、実際の最低投資額は10万円から100万円が中心です。

 

三井物産デジタル・アセットマネジメントの「ALTERNA」は、最低投資金額が原則10万円です。過去に販売した案件の想定利回りの平均は年3.8%でした(ALTERNA公式サイト、2026年2月18日時点)。この数値は税引前の予想分配金利回りを平均したもので、物件を売却したときの損益は含みません。

 

一方、「野村證券」が取り扱う銘柄は、基本的に最低投資単位を1口100万円としています。同じ不動産STでも、事業者や銘柄によって最低投資額に幅があります。

 

運用期間は4年から7年程度が中心です。ここで挙げた利回りはいずれも想定や予想であり、受け取れる金額を約束するものではありません。

 

 

現物不動産・J-REIT・不動産クラウドファンディングとの違い

不動産投資に関わる方法は、不動産STのほかにもあります。現物の不動産、J-REIT、不動産クラウドファンディングの3つです。

 

選ぶときの基準は、いくら必要か、いつ現金化できるか、どこまで手間がかかるかの3つに整理できます。どれが優れているという話ではなく、手元の資金と、そのお金を動かさずにおける期間によって、条件の合う方法が変わります。

 

 

(1)4つの投資方法を5つの軸で比較

まず、4つを同じ軸で並べます。

 

4つの投資方法を5つの軸で比較

 

表を見ると、不動産STは最低投資額と運用期間の両方で、現物不動産と不動産クラウドファンディングの中間に位置しています。

 

まとまった資金を数年動かさずにおきたい場合は不動産STが候補に入り、少額から始めたい場合は最低投資額の低い方法が条件に合います。

 

 

(2)現物不動産とJ-REITとの違い

現物不動産との一番の違いは、必要な資金と手間です。

 

現物の不動産投資では、物件の取得価格が数千万円単位になることが一般的です。ローンを組んで自己資金以上の物件を持てる反面、保険の手配や修繕、入居者への対応といった実務が発生します。

 

不動産STにはこうした実務がなく、運用は専門の会社が行います。その代わり、ローンを使って投資額を大きくすることはできません。

 

J-REITとの違いは、値動きの決まり方にあります。J-REITは証券取引所で売買されるため、価格は保有する不動産の状況だけでなく、株式市場全体の動きからも影響を受けます。

 

不動産STは特定の物件に紐づいているため、値動きの理由が異なります。ただし、これは価格の変動が小さいことを保証するものではありません。

 

 

(3)不動産クラウドファンディングとの違い

不動産クラウドファンディングとの違いは、根拠となる法律にあります。

 

不動産STは金融商品取引法に基づく有価証券です。買うには証券会社に口座を開き、ST取引用の手続きを行う必要があります。

 

不動産クラウドファンディングは不動産特定共同事業法に基づく事業です。不特定多数から小口の資金を募る場合には、匿名組合型が用いられます(参考:国土交通省の実務手引書、令和5年9月)。

 

手続きは事業者のサイトで完結します。会員登録のあと、スマートフォンで本人確認を行い、数営業日で投資家登録が完了する形が一般的です。

 

 

不動産クラウドファンディングの仕組みの詳細は、以下の記事で解説しています。

 

不動産クラウドファンディングの仕組みとは?メリットや他投資と比較不動産クラウドファンディングの仕組みとは?メリットや他投資と比較

 

 

不動産STを始める前に確認したい3つの注意点

不動産STは、元本が保証された商品ではありません。ALTERNAも、提供する金融商品は元本保証や将来の投資成果を保証するものではないと明記しています。

 

そのうえで、始める前に確認しておきたい点が3つあります。換金のしやすさ、資金が拘束される期間、税金の扱いです。

 

 

(1)途中で売却できるとは限らない

不動産STには二次流通の市場がありますが、上場株式のようにいつでも売れる状態ではありません。

 

2023年12月、大阪デジタルエクスチェンジが運営する「START」が、日本初のセキュリティ・トークンの二次流通市場として売買を開始しました。

 

ただし、STARTで取り扱われない既発のSTは証券会社との相対取引になり、取得元の証券会社に買い取ってもらう方法に限られることが多いとされています。

 

STARTの取扱銘柄も上場有価証券ではないため、流動性は上場株式と異なります。銘柄によっては、売却の相手や方法に制限が設けられているものもあります。

 

 

(2)運用期間は4年から7年で、資金が数年動かせない

運用期間の長さは、利回りより先に確認しておきたい条件です。

 

不動産STの運用期間は4年から7年程度が中心です。この間、投じたお金は原則として動かせません。

 

30代から40代は、住宅の取得や子どもの教育費など、まとまった支出が発生しやすい時期にあたります。数年先に使う予定のあるお金を充てると、必要なときに引き出せない事態になります。

 

生活防衛資金や近い将来に使う資金とは、分けて考える必要があります。

 

 

(3)税金の扱いと確定申告の手間

不動産STと不動産クラウドファンディングでは、税金の扱いが異なります。

 

不動産STの分配金は20.315%が源泉徴収され、申告分離課税の対象になります。上場株式などの損失との損益通算もできます。

 

分配金の税務上の扱い出典:不動産STの分配金に関する税務上の取り扱い変更について

 

2026年4月1日以降は、分配金のうち利益を超える部分が元本の払い戻しとして扱われ、その損益は譲渡所得等として申告分離課税の対象になりました。損失を翌年以降に繰り越すには確定申告が必要です。

 

一方、不動産クラウドファンディングの分配金は雑所得とされ、総合課税の対象で、源泉徴収の税率は20.42%です。

 

どちらが有利かは所得の状況によって変わるため、判断に迷う場合は税理士や所轄の税務署に確認してください。

 

 

不動産STを検討する前に整理しておきたいこと

不動産STは、大型の不動産を小口に分けたデジタル証券です。名前にトークンという言葉が入りますが、金融商品取引法に基づく有価証券として扱われ、暗号資産とは別の枠組みにあります。

 

ここまでの内容を3つに整理します。

 

●不動産STは金融商品取引法上の有価証券で、投資家を保護するルールは適用されるものの、元本が保証される商品ではありません。

 

●最低投資額は10万円から100万円、運用期間は4年から7年が中心で、途中で売却する手段は限られます。

 

●分配金は申告分離課税の対象で、不動産クラウドファンディングの雑所得とは扱いが異なります。

 

不動産STOは、まとまった資金を数年動かさずにおける場合に選択肢へ入ります。一方、まずは少額で不動産投資の感触をつかみたい場合には、1万円から始められる不動産クラウドファンディングのように、最低投資額と運用期間の条件が異なる方法もあります。

 

自分が用意できる資金と、そのお金を使う予定の時期を確認したうえで、条件に合うものを選んでください。

 

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