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住居用不動産投資の消費税還付って本当に受けられる?歴史と現状を解説!

2023.05.15

コラム記事89のメイン画像 不動産投資

以前は住居用不動産の購入の際に消費税の還付を活用して支払った税額がほぼ全額戻ってきました。その後の法改正で還付に制限がかかってきましたが、その抜け道もありました。 しかし、現在では、消費税の還付を受けることはほぼ不可能な状況になっています。 これまでどのように消費税の還付ができたのかを解説し、今後はどのようなスタンスで不動産投資に向き合っていけばいいのかを紹介します。


不動産投資にかかる消費税

不動産投資をする際に支払う金額は高額になります。
それに伴って、かかる消費税も高額になります。

ただし、不動産に関わる費用には消費税がかかるもの・かからないものがあるのでまとめてご紹介します。

 

不動産投資で賃貸物件を購入する際には以下の費用がかかります。

・不動産取得費(建物代 + 土地代)
・仲介手数料
・登記費用
・不動産取得税
・印紙税
・住宅ローン手数料
・火災保険料
・固定資産税(建築済み物件では、1月1日時点での所有者に日割りで負担)

 

上記の費用のうち不動産取得税と印紙税、住宅ローン手数料、火災保険料、固定資産税には消費税がかからず、不動産取得費、仲介手数料、登記費用、には消費税がかかります。

 

不動産取得費については、土地は非課税、建物は課税事業者から購入する場合のみ課税となります。
課税事業者でない個人などから購入する場合には消費税はかかりません。

 

仲介手数料は、法律上の上限が定められており売買価格から以下の計算式で計算できます。
仲介手数料 = 売買価格 × 3% + 6万円
この金額に対して消費税が課税されます。

 

登記費用は司法書士に依頼する際のサービスに対する報酬が発生し、そこに消費税が課税されます。

たとえば、建物の購入代金が5,000万円の場合は500万円の消費税が発生します。土地の購入代金には消費税が課税されません。

さらに仲介手数料や登記費用にかかる消費税も加わります。その消費税が返ってくるというのが、消費税還付という制度です。

 

不動産購入にかかる消費税は高額になるため、還付の制度は不動産取得者にとって金銭的メリットが非常に大きいです。

 

しかし、この制度を活用しようとしても通常の方法では消費税の還付を受けることができません。

そのため、以前はどうにかして物件購入時や建築時に支払った多額の消費税の還付を受けようと、あの手この手を考えてスキームが考案されてきました。

 

不動産投資における消費税還付の仕組み

それでは消費税不動産投資における消費税還付とはどのような制度なのでしょうか。

支払った消費税が戻ってくるのであればその制度を活用したいところです。

ここでは不動産投資における消費税還付の仕組みを説明していきます。

 

消費税還付は事業者が支払った消費税額が受け取った消費税額よりも多かった場合に、その差額が還付金として戻ってくる制度です。

 

支払った消費税がなければ差額は生まれないため、消費税の還付金を受けとるためには「課税売上」が必要になります。

 

不動産を賃貸物件として貸し出す場合、入居者が支払う賃料は消費ではないので非課税です。

つまり、家賃収入だけでは課税売上が発生しません。管理費や共益費、敷金、礼金なども消費にあたらないため非課税となります。

 

不動産投資においては家賃収入以外の課税売上を得る必要があります。かつては後ほど事例を紹介するスキームを使って課税売上を作っていましたが、現在では認められていません。

課税売上を作るための手段として考えられるのは、店舗や事務所など「居住用賃貸建物」ではない不動産を取得して賃料を得る方法です。

店舗や事務所などの賃料は消費税が課税されます。

 

不動産投資では消費税の還付が受けられない理由

不動産投資では、原則として消費税の還付が受けられません。
その理由は主に以下の2つがあげられます。

 

 

理由①:家賃収入は非課税売上であるため

消費税の還付を受けられない一つ目の理由は、家賃収入が非課税売上となるからです。

消費税の納税額の計算の際に、支払った消費税額を控除するのは、事業者に消費税が二重に課税されることを防ぐためです。消費者から受け取った消費税は事業者が納税します。しかしこの消費税額をそのまま納税すると、事業者が仕入れ時に支払っている消費税も合わせて二重に負担することになってしまいます。

これを避けるために、事業者は「受け取った消費税額」から「支払った消費税額」を差し引いて納税します。

 

消費税の二重課税を避けるための控除である以上、事業者が消費者から消費税を預かっていることが必要です。

 

消費税を預かっているとはつまり売上に消費税が含まれているということです。

ところが、不動産オーナーにとっての売上である家賃収入には消費税が含まれていません。

居住用物件の賃貸収入には家賃の他にも管理費や共益費、敷金、礼金などもありますがこれらも非課税です。

参照:No.6226 住宅の貸付け|国税庁

 

売上が非課税なので、支払った消費税額は控除されません。

以上の理由から、不動産賃貸業を営むオーナーは、消費税還付を受けることができません。

 

 

理由②:不動産オーナーの大半が還付を受けられない免税事業者であるため

不動産賃貸業を営むほとんどのオーナーが免税事業者であることが消費税の還付を受けられない理由の二つ目になります。

事業者には、納税義務がある「課税事業者」と、納税義務がない「免税事業者」の二種類があります。
不動産賃貸経営をスタートする時点ではオーナーは免税事業者であることが多いです。
そもそも消費税還付は課税事業者のための制度ですので、免税事業者であるオーナーは消費税の還付を受けられないのです。

 

「かつては使えた」不動産投資の消費税還付スキーム

不動産投資では消費税還付を受けられないことはわかりましたが、これまではどのように還付を受けることができたのか、そのスキームとそれに対する税制改正の流れを紹介します。

 

もともと家賃は課税対象となっており、賃貸オーナーは課税事業者であったため、家賃から課税売上が生じて消費税の還付を受けることができました。

しかし、平成3年度(1991年度)の税制改正で家賃が非課税となり、それと同時にオーナーは免税事業者となりました。

この法改正によって、不動産オーナーは不動産取得の際に支払った消費税の還付を受けられなくなりました。

 

不動産オーナーにとって消費税の還付はメリットが大きかったので、どうにかして還付を受けようと税制の抜け道を探してスキームを考案してきました。

消費税の還付を受けるために突いたポイントは「不動産賃貸業では家賃のみの収入となって課税売上が発生しないため、賃貸業と同時に別の事業を行うことで課税売上を発生させ、消費税還付を受けられるようにする」という点です。

 

自動販売機スキーム【1991年〜2016年】

平成3年度(1991年)の税制改正で家賃が非課税になったことにより、まず登場したのが「自動販売機スキーム」と呼ばれる手法でした。

このスキームでは、取得した物件の敷地内に自動販売機を設置して飲み物を販売します。

飲み物の販売によって課税売上が生じるので、オーナーは消費税の還付を受けられるようになるという仕組みでした。

自動販売機スキームで消費税の還付を受けるためには以下の3つの手順を行います。

 

手順①:課税事業者となる

消費税の還付を受けるには課税事業者である必要があります。課税事業者となるための条件は、「基準期間(課税期間の前々年度)の課税売上高が1,000万円を超えること」です。
しかし、不動産賃貸業を始める時点では前々年度の課税売上がないので、初年度から課税事業者となるためには「消費税課税事業者選択届出書」を提出します。

参照:[手続名]消費税課税事業者選択届出手続|国税庁

 

 

手順②:初年度は家賃収入を発生させず、課税売上を発生させる

初年度は敷地内に自動販売機を置いて飲み物の販売をして課税売上を発生させますが、この時点では賃貸経営を開始してはいけません。

住居人を募集しないかフリーレント期間に設定するなどして、家賃収入(非課税売上)を発生させないことがポイントです。

なぜなら、「全体の売上高に占める課税売上高の割合が95%以上の場合、購入時や新築時に支払った消費税額の全額を控除できる」というルールがあるからです。課税売上割合が95%未満になってしまうと、消費税額を全額控除することはできません。

初年度に非課税売上となってしまう家賃収入が発生していると、自動販売機からの課税売上割合が95%未満になる可能性が高いため、初年度の売上は家賃収入を得ずに自動販売機による課税売上100%にする必要があります。

 

 

手順③:税務署に消費税の還付申告をする

自動販売機の設置によって課税売上を作り、家賃収入を発生させないことで初年度の課税売上割合を100%にします。

そうすることで、物件購入時に支払った消費税全額の還付を受けることができるようになるので還付金を計算して税務署に還付申告をします。

たとえば3,000万円の物件を購入したときの消費税額は300万円、自動販売機での飲み物の売上がたったの110円だったとしても、飲み物の消費税額10円から支払った消費税額300万円を全額控除して、299万9,990円の還付を受けることができます(税率10%の場合)。

 

 

ここまでが自動販売機スキームによる消費税の還付方法の概要です。

しかしここには問題がありました。ただ自動販売機を置いて課税売上を作れば還付を受けられるわけではありません。
「不動産購入後の3年間通算で課税売上の割合が著しく(50%以上)減少した場合、還付を受けた消費税を返納しなければならない」というルールが存在したからです。

 

このルールを噛み砕くと、飲み物の販売によって初年度の課税売上割合が100%であっても、2、3年目で非課税売上となってしまう家賃収入が発生することで、自動販売機による飲み物の課税売上の割合は大きく減少します。

課税売上が50%以上の減少となった場合、還付された消費税額を3年目に税務署に返納しなければならないというルールでした。

 

ただし、このルールによる制約を簡単に回避する抜け道もありました。

3年目の時点で課税事業者となっていなければ、還付された消費税を返納する必要がなくなりました。

そのため、2年目に課税事業者から免税事業者になる申請をすることで、自動販売機スキームは有効な還付金を受け取るための戦略でした。

 

このようにして自動販売機スキームが流行し、簡単に消費税の還付を受ける不動産オーナーが増加しました。

国税庁はこの実態を問題視して、平成22年度(2010年度)の税制改正で免税事業者になることへの規制を加えました。

その規制の内容は「課税事業者となってから2年以内に100万円以上の不動産を購入した場合は、購入後3年間は免税事業者に戻れなくする」という税制の改正です。

これにより、3年目に免税事業者に戻ることができず、還付された消費税額を返納しなくてはならなくなりました。

参照:「消費税法改正のお知らせ」(平成22年4月 )

 

ただ、ここにも抜け道がありました。

それは「課税事業者になってから2年間は物件を購入せず、3年目に物件を購入する」という方法です。

事業者としては2年間の休眠期間を設けることになりますが、3年目に自動販売機の設置と飲み物の販売をすることで売上を作り、課税売上割合を100%にして物件購入時の消費税全額を控除して還付を受けることができました。

4年目から免税事業者になっても、物件購入後3年目に受けとった還付金を返納する必要はありませんでした。

 

もちろん、このスキームも問題視され、平成28年度(2016年度)の税制改正で次のような規制が加わりました。
「課税事業者が1,000万円以上の不動産を購入した場合は、購入後3年間は免税事業者になることが禁止」となりました。

この改正で、課税事業者が免税事業者になることによって、消費税還付から3年目の還付金の返納を回避するスキームは封じ込められました。

参照:消費税法改正のお知らせ

 

 

金地金売買スキーム【2016年〜2020年】

平成28年度(2016年度)の税制改正により免税事業者になることで消費税還付金の返納を回避する自動販売機スキームは不可能になりました。

 

そこで次に登場したのが「金地金売買スキーム」です。

金地金の売買を繰り返し行うことで課税売上を作り、消費税の還付を受けるという方法でした。

 

前項の自動販売機スキームで突いていたのは「不動産購入後の3年間通算で課税売上の割合が著しく(50%以上)減少した場合、還付を受けた消費税を返納しなければならない」というルールを、免税事業者になることで回避する方法でした。

しかし、平成28年(2016年)の税制改正により、消費税還付から3年目での返納を回避することはできなくなりました。

 

次に、「不動産購入後の3年間で、課税売上の割合を著しく(50%以上)減少させない方法」として、金地金売買スキームが編み出されました。

この方法では、非課税売上である家賃収入が発生するタイミングで、課税売上が飲み物の販売だけだと課税売上割合はどうしても50%以上減少してしまいます。

そこで、課税売上を減少させないためにさらなる課税売上を発生させることがポイントになります。

しかし、現実的にそれだけの課税売上を自動販売機で発生させることは厳しいです。

 

そこで目を付けられたのが金地金の取引です。

金は高単価であることに加えて流動性も高いため、売買を繰り返すことで短期間でも多額の課税売上を発生させることができます。

消費税還付以後は家賃収入以上の金地金売上を発生させることで、課税売上割合を著しく(50%以上)減少させることがなくなり、消費税還付の返納をせずにすみました。

 

 

令和2年度(2020年度)税制改正で消費税還付は不可能に

課税売上割合を操作することで消費税の還付を図った金地金売買スキームは、令和2年度(2020年度)税制改正により一切できなくなりました。

 

この税制改正の具体的な内容は主に以下のようになります。

・居住用として賃貸する建物の購入に伴う消費税は、仕入税額控除が一切認められない
・購入物件である建物が現実に住宅として貸し付けていないとしても、少しでも居住用物件として貸し付ける可能性があるなら仕入税額控除は認められない

参照:消費税法改正のお知らせ(令和2年4月)

 

つまり、金地金売買でどんなに課税売上割合を操作しても居住用物件の賃貸事業では消費税の控除ができないとされました。

 

上記の改正により、金地金売買スキームによる消費税の還付金への規制だけではなく、すべての居住用の不動産賃貸業における仕入税額の控除が一切認められなくなりました。

今後はこれまでのようなスキームを見つけ出すことは不可能といえそうです。

 

正攻法で不動産投資家としての拡大を目指しましょう

令和2年度(2020年度)の法改正により住居用不動産の消費税還付は不可能になりました。

今後の不動産経営は消費税の還付をあてにせず、賃貸経営のキャッシュフローとしっかり向き合った不動産投資のスタンスをとることが重要になります。

 

今回紹介した消費税還付スキームは過去にあった税制の抜け道とそれに対する税制改正のいたちごっこです。

ここで大事なことは抜け道を探すことではなく、様々な税制度を知ることでご自身の不動産経営の知識を蓄えていくことです。

 

小手先のテクニックに頼らず、不動産や消費税の知識を蓄え、所有不動産を増やして事業拡大を目指すことが今後の戦略の一つです。

 

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