不動産投資と税制優遇の関係
不動産投資における税制優遇は、投資の成功に大きな影響を与えます。
税制優遇をうまく活用すると、税金の負担を軽くすることができ、結果として手元に残る利益を増やせます。
具体的には、所得税、相続税、贈与税といったさまざまな税金の軽減が可能です。
このような税制優遇を理解し、しっかりと活用することが、不動産投資の収益を最大化する鍵となります。
所得税と住民税での税制優遇
所得税の基本
所得税は、個人の所得に対してかかる税金です。
その税額は、1年間のすべての所得(収入から必要経費などを差し引いた残りの金額)から所得控除を差し引いた課税所得に対して所定の税率をかけ、最後に税額控除を差し引いて計算します。
●所得税額 = 課税所得(収入金額-経費-所得控除額)× 所得税率 - 税額控除額
所得税の税率は、所得が多くなるにつれ段階的に高くなっていく「超過累進税率」という仕組みが採用されており、最高税率は45%です。
住民税の基本
住民税の税率は、所得に対して一律で10%です。所得税と同じく、住民税も総所得から各種控除を差し引いた課税所得に基づいて計算されます。
住民税は市区町村によって計算され、基本的には所得税の計算ルールと連動しています。
税制優遇が受けられる仕組み
所得税には、各種所得の合計額に課税される「総合課税」と、ほかの所得とは合算できず個別の納税が義務づけられている「分離課税」があります。総合課税の対象となる代表的な所得としては給与所得や事業所得がありますが、不動産所得も総合課税の対象となっているのです。
税制優遇を受けるには、総合課税の黒字所得から赤字所得を差し引く「損益通算」ができるというメリットを活用します。
不動産投資で赤字が発生したとしても、給与所得などと損益通算することによって、黒字部分の所得から赤字分を相殺することができます。
その結果として課税される所得金額が少なくなり、節税につながります。
例えば、給与所得が600万円あるサラリーマンが不動産投資を始め、初年度には諸々の経費がかかるため赤字額が100万円だったと仮定します。
この場合、給与所得と不動産所得の損益通算により、課税所得は600万円-100万円=500万円に下がります。
つまり、給与所得が500万円の人と同じ所得税の支払いで済むようになるのです。
住民税も所得税の計算と同じ損益通算の概念が適用されます。住民税の計算は、所得税の確定申告書を基に市区町村が行います。
基本的には所得税の計算ルールと連動しており、一律で課税所得の10%が課税されます。
所得税が少なくなるのであれば、住民税も結果的に少なくなるので、所得税と住民税は同じ仕組みで減額されます。
不動産所得に計上できる経費
不動産投資では、さまざまな費用を経費として計上できます。主に以下に挙げるような経費を計上することで、所得税を抑えることができます。
このように、不動産投資において発生した費用の多くは経費に計上することが可能です。
減価償却の仕組みとその効果
不動産の購入費用は、減価償却費という形で毎年少しずつ経費として計上できます。
減価償却費は、実際にお金を支払っていないにもかかわらず、経費として認められるものです。
マンションなどの固定資産の購入額を耐用年数に合わせて分割し、経費として計上するための勘定科目が減価償却費です。
減価償却費を経費として計上できれば、実際には不動産事業が黒字収支であったとしても会計上は赤字という状態を作り出せます。
そのため、減価償却費は節税するうえで重要な勘定科目なのです。
建物の構造による減価償却期間
減価償却費を計上できる期間は、建物の構造ごとに定められた法定耐用年数に関係します。建物には耐用年数というものがあり、住宅用の建物の耐用年数は以下のように定められています。
(※)年未満の端数は切り捨て、耐用年数が2年に満たないときは2年とする
木造住宅の耐用年数に比べると、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の建物の方が耐用年数が長いです。
仮に投資物件の取得金額が同じであった場合、耐用年数が短い方が、1年に計上できる減価償却費は高くなるため、課税所得を圧縮できて節税に効果的です。
しかし、減価償却費として計上できる期間は短くなってしまうため、法定耐用年数を過ぎてしまった場合は、節税効果を得ることができない点に注意しなければなりません。
中古物件は新築物件よりも物件価格が安い傾向があり、初期投資額を抑えられる点にメリットがあります。
一方で、新築物件よりも入居付けが難しいことや、修繕リスクが高いことなど、収益を得るためにかかる諸費用が高くつきやすいというデメリットもあります。
贈与税の優遇措置
贈与税の基本
贈与税は、財産を他人から無償でもらった際、受け取った側に課される税金です。
贈与された財産には、110万円の基礎控除が設定されているため、年間合計110万円までの財産なら贈与税はかかりません。
贈与税は、以下の計算式で算出できます。
●(受け取った財産額-110万円)×税率-控除額
税率と控除額は、基礎控除適用後の財産額により異なります。
出典:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁
贈与税の税制優遇が受けられる仕組み
不動産を贈与する際の贈与税の計算には、国税庁が定めた「相続税評価額」を使用します。
不動産を贈与する際は時価ではなく、相続税評価額により贈与税を算出するのが基本的なルールです。
この方式により算出される不動産の評価額は、時価より2割〜3割ほど低くなります。
つまり、不動産を現金に換えて贈与するより、そのまま不動産として贈与する方が、資産が低く評価されて節税につながるのです。
例えば、時価1億円の不動産を贈与する場合、相続税評価額が7,000万円とされることがあります。
この場合、基礎控除後の6,890万円(7,000万円-110万円)が課税対象となります。
評価額が低いため、現金での贈与よりも贈与税が少なくなります。
なお、不動産取得直後に贈与した場合は、あからさまな節税対策として指摘される恐れがあるため注意が必要です。
不動産の贈与には、登録免許税や不動産取得税が課されるという点も覚えておく必要があります。
相続税の税制優遇
相続税の基本
相続税は、故人から財産を相続する際、相続人に課せられる税金です。
相続税は、以下のステップで算出します。
なお、配偶者の税額軽減制度により、一定の条件を満たした配偶者は税額が優遇されます。
(1)遺産総額から基礎控除額を差し引き、課税遺産総額を算出する。基礎控除額は、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算する。
(2)課税遺産総額から法定相続分をもとに算出した各相続人の取得金額に所定の税率をかけ、控除額を差し引く。算出した各人の相続税額を合計する。
(3)相続税額の総額を各相続人の課税価格に応じて割り振り、それぞれに課される税額を算出する。
相続税の具体的な計算方法については、以下の国税庁のサイトに記載されているので、確認してみてください。
相続税の税制優遇が受けられる仕組み
不動産投資による相続税の節税は、贈与税の場合と同じです。
贈与税は、相続税評価額により算出されるルールでしたが、相続税も同様に相続税評価額により計算します。
課税対象額が引き下げられれば相続税も下がるため、贈与税と同様に節税が可能です。
借地や借家を相続する場合は、さらに相続税評価額が下がる可能性があることも覚えておきましょう。
不動産投資で節税する際の注意点
会社員や公務員などのサラリーマンが不動産投資の税制優遇を活用して節税をする際の注意点を解説します。
不動産投資の目的を明確にする
サラリーマンが不動産投資を始めると、減価償却費を計上することができるようになり、給与所得と損益通算ができるために節税ができます。
しかし、減価償却ができる期間は決まっており、不動産投資である程度の収益を得られるようになれば、それに応じた額の納税が必要になります。
また、損益通算により、大きな節税効果が期待できるのは初期費用がかかる初年度であり、それ以降は節税効果が小さくなることも覚えておきましょう。
節税するには青色申告が必要
不動産投資で所得を得た場合はもちろん、損益通算で節税するためにも確定申告をしなければなりません。
確定申告には白色申告と青色申告の2つの方式があります。
白色申告に比べると青色申告は必要になる書類などが増え、手間はかかりますが、青色申告による確定申告をした方が節税効果は高まります。
青色申告は青色申告特別控除として10万円もしくは最大65万円を控除することができるからです。
サラリーマンの場合、確定申告をする機会が少ないため、確定申告についての知識が少ないことが多いです。
そんなときには、税務署などに相談することができます。
不動産投資を始めるのであれば、青色申告による確定申告を行うようにしましょう。
確定申告については以下の記事で解説しています。
不動産クラウドファンディングには確定申告が必要!経費計上や節税対策、手続きの流れを学ぼう
確定申告の流れは以下の通りです。
(1)所得額を確認する
(2)必要な書類を準備する
(3)確定申告書を記入する
(4)税務署に提出する
(5)納付する・還付される
まとめ
不動産投資における税制優遇の基本と、その具体的な活用方法について解説しました。
税制優遇を適切に利用することで、所得税や、相続税・贈与税の負担を軽減し、投資の収益性を高めることができます。
実際に不動産投資を始める際には、まずは基本的な知識を身につけ、専門家と相談しながら具体的な計画を立てることをおすすめします。
また、定期的に最新の税制情報をチェックし、適切なタイミングでの対策を行うことが重要です。
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