1 | なぜ今、空室対策にリフォームが有効なのか？
空室対策としてリフォームが注目される背景には、賃貸市場の変化があります。ここでは、リフォームの必要性と、それがもたらす具体的なメリットを解説します。
1-1 | 築古物件が敬遠される理由
現代の賃貸市場では、入居者が住まいに求める水準が上がり、古い設備やデザインの物件は「陳腐化」し、選ばれにくくなっています。
出典：【2025年版】オーナーが知っておきたい！賃貸で人気の設備ランキング
特に、全国賃貸住宅新聞の「入居者に敬遠される設備ランキング」でも常に上位に挙がる「3点ユニットバス」や「室外洗濯機置場」「和室」などは、内見の段階で候補から外される大きな要因です。
新築物件では標準装備となっている設備がないだけで、相対的に物件価値が下がってしまうのです。リフォームをしないことは現状維持ではなく、市場から取り残されていくことを意味します。
1-2 | リフォームがもたらすメリット
空室対策リフォームは、物件の競争力を高める有効な「投資」です。具体的には以下の5つのメリットがあげられます。
(1)資産価値の向上
(2)競合物件との差別化
(3)内見率・成約率の向上
(4)家賃下落の抑制
(5)入居者満足度の向上による長期入居の促進
リフォームは家賃アップを狙う「攻めの投資」であると同時に、資産価値の陳腐化を防ぐ「守りの投資」という、2つの重要な側面を持っているのです。
2 | 【失敗しない計画術】リフォームを始める前の3ステップ
リフォームで失敗しないためには、事前の計画が全てです。思いつきで進めるのではなく、データに基づいた3つのステップで、投資効果を最大化しましょう。
2-1 | ステップ1：ターゲット（入居者像）を明確にする
まず「誰に住んでほしいか」を具体的に描く「ペルソナ設定」が重要です。ターゲットのライフスタイルを深く掘り下げることで、必要なリフォーム内容が明確になります。
たとえば「リモートワーカー」を狙うなら、オンライン会議に支障がない安定した高速インターネット環境はもちろん、PCやモニターを複数置いても問題ない十分な数の電源コンセント、そして仕事に集中できる防音性などが重要な要素となります。
入居率の高い物件については以下の記事で詳しく解説しています。あわせてお読みください。
不動産投資成功は「入居率」がポイント！高入居率物件といい管理会社の選び方
2-2 | ステップ2：周辺の競合物件を調査し「勝ち筋」を見つける
次に、不動産ポータルサイトで競合物件を分析し、自分の物件が勝てる市場の「穴」、つまり「勝ち筋」を特定します。
たとえば、周辺物件が和室ばかりなら、洋室化するだけで明確な優位性を築けます。近年はオンライン内見も増えているため、画面越しに伝わる「デザイン性」や「清潔感」も重要な判断基準です。
2-3 | ステップ3：費用対効果を計算する（投資回収の目安）
リフォームは、データに基づいた厳密な予算策定が不可欠です。「リフォーム費用は家賃の3年分以内」という目安を参考にしつつ、詳細な投資回収シミュレーションを行いましょう。
単なる工事費だけでなく、家賃の上昇額や空室期間の短縮効果、さらに後述する税務上の扱いまで考慮することで、より精度の高い投資判断が可能になります。
3 | 【費用対効果で選ぶ】空室対策リフォーム完全ガイド
計画が固まったら、次は具体的なリフォーム内容の選定です。限られた予算で最大の効果を得るため、費用対効果の高い箇所から優先的に見ていきましょう。
3-1 | 【低コスト・高効果】まず検討したい人気設備
客観的なデータとして、全国賃貸住宅新聞が毎年発表している「人気設備ランキング」が非常に参考になります。
このランキングは「この設備がなければ入居が決まらない」という必須設備と、「この設備があれば家賃が高くても決まる」という付加価値設備に分かれています。
まずは「TVモニター付きインターホン」や「温水洗浄便座」といった必須設備が整っているかを確認しましょう。
その上で、「インターネット無料」（単身者向け付加価値ランキングで10年連続1位）や、需要が急増している「宅配ボックス」、「追いだき機能」といった付加価値設備を検討するのが、費用対効果の高い戦略です。
3-2 | 【水回り】内見の決め手になりやすい最重要エリア
キッチン・浴室・トイレなどの水回りは、清潔感が生活に直結するため、内見時に最も厳しく見られる場所です。
古い水栓をシングルレバーに交換する、追いだき機能や浴室乾燥機を追加する、温水洗浄便座を設置するなど、比較的小さな変更でも大きな効果が期待できます。
3-3 | 【内装】費用を抑えつつ部屋の印象を激変させる方法
壁紙と床材は、部屋の印象を一新できるコストパフォーマンスの高いリフォーム箇所です。
壁の一面だけ色を変える「アクセントクロス」や、既存の床の上から貼れる「フロアタイル」などを活用すれば、費用を抑えつつ、おしゃれでモダンな空間を演出できます。
3-4 | 【間取り・収納】長期入居につながる快適性の向上
現代のライフスタイルに合わせた間取りや収納は、入居者の満足度を高めます。
不人気の「和室」を「洋室」に変更したり、押入れをハンガーパイプ付きの「クローゼット」に改修したりするだけで、使い勝手は格段に向上し、長期入居につながりやすくなります。
3-5 | 【外観・共用部】入居希望者が最初に目にする「物件の顔」
部屋の中が綺麗でも、エントランスや外壁が汚れていると、内見の機会を失いかねません。
外壁塗装や集合ポストの交換など、建物全体の清潔感を維持するための投資は、物件の第一印象を良くするために不可欠です。
4 | 場所別のリフォーム費用相場一覧
具体的なリフォームを検討するために、場所別の費用相場を把握しておきましょう。あくまで目安ですが、予算を立てる際の参考にしてください。
4-1 | 水回りリフォームの費用相場
水回りのリフォームは比較的高額になりますが、その分、入居者へのアピール効果も大きい部分です。あくまで目安ですが、一般的な費用相場は以下の通りです。
・システムキッチン交換…50～100万円
・ユニットバス交換…40～75万円
・トイレ交換…10～30万円
・独立洗面台設置…15～50万円
これらの費用は、導入する設備のグレードや工事の規模によって大きく変動します。正確な金額を把握するため、計画の際には必ず複数のリフォーム会社から見積もりを取り、比較検討することが重要です。
4-2 | 内装・間取り変更の費用相場
内装や間取り変更の費用は、使用する材料や工事の範囲によって変わります。
・壁紙張替え（6畳）…4～6万円
・畳をフローリングに変更（6畳）…15～60万円
・和室を洋室に変更…20～40万円
4-3 | 設備・外観の費用相場
その他の設備や外観に関するリフォームの費用相場も見ていきましょう。
・モニター付きインターホン設置…3～7万円
・宅配ボックス設置…5万円～
・外壁塗装（アパート一棟）…0～150万円
5 | リフォーム費用をさらに抑える4つの裏ワザ
リフォーム費用は、工夫次第でさらに抑えることが可能です。ここでは、すぐに実践できる4つのコスト削減術を紹介します。
5-1 | 必ず複数社から「相見積もり」を取る
リフォーム費用を管理する上で「相見積もり」は基本です。同じ工事でも会社によって金額は大きく異なります。
金額だけでなく、見積書の詳細さ、賃貸物件リフォームの実績、担当者の提案力、さらには建設業許可やリフォーム関連保険の有無、工事完了後のアフターサポート体制までを総合的に比較し、信頼できるパートナーを選びましょう。
5-2 | 税務知識を活用する
リフォーム費用は、税務上「修繕費」か「資本的支出」に分類されます。
「修繕費」は原状回復と見なされ、その年に一括で経費計上できます。たとえば、一つの工事や購入にかかった費用が20万円未満の場合や、おおむね3年周期で行う修繕などがこれに該当します。
一方、物件の価値を高める「資本的支出」は資産と見なされ、数年に分けて減価償却します。この知識を活用すれば、所得に応じた戦略的な節税が可能です。
税制優遇の活用については以下の記事で詳しく解説しています。こちらもあわせてお読みください。
5-3 | 自治体の補助金・助成金制度を調べる
国や自治体には、省エネ化（高断熱窓への交換など）、耐震化、バリアフリー化などを対象としたリフォーム補助金制度があります。
重要なのは、ほとんどの制度で「工事契約前の事前申請」が必須であること。計画の初期段階で、物件所在地の自治体ホームページなどを必ず確認しましょう。
5-4 | 【上級者向け】オーナーDIYで工賃を節約する
照明交換やアクセントクロス施工など、簡単な作業を自分で行う（DIY）ことで工賃を節約できます。
ただし、仕上がりの質が低いと逆に物件の魅力を損なうリスクや、資格が必要な工事はできないといった制約もあるため、慎重に判断しましょう。
6 | リフォームは有効な空室対策。でも、もっと手軽な不動産投資を知っていますか？
今回は、空室対策リフォームを成功させるための具体的な方法を解説しました。重要なポイントは以下の通りです。
・リフォームは、資産価値を守り高めるための「投資」と考える。
・計画は「ターゲット設定」「競合分析」「費用対効果の計算」が鍵。
・客観的データを参考に、費用対効果の高い箇所から優先的に行う。
・相見積もり、税務知識、補助金を活用し、コストを賢く抑える。
最も重要なのは、リフォームをあなたの資産価値を最大化するための「戦略的投資」と捉えることです。
とはいえ、リフォームにはまとまった資金と手間がかかるのも事実です。もし「まずはリスクを抑えて、手軽に不動産投資を始めたい」とお考えなら、1万円から始められる「不動産投資クラウドファンディング」を検討してみてはいかがでしょうか。プロが選んだ物件に手間なく投資できるこの方法で、資産形成の第一歩を賢く踏み出しましょう。
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