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不動産投資で重要性増す環境性能〜サラリーマン投資家のための最新評価基準ガイド〜

2024.12.17

コラム記事181のメイン画像 不動産投資

不動産投資において、「環境性能」が新たな価値基準として注目を集めています。2025年度からの建築物省エネ法改正により、全ての新築住宅・建築物に省エネ基準適合が義務付けられることが決定し、不動産市場は大きな転換期を迎えています。 一般財団法人日本不動産研究所の不動産投資家調査によると、環境性能の高い不動産は将来的に5%程度高い賃料収入が期待できるとされ、投資判断における重要性が増しています。 この記事では、サラリーマン投資家の皆さんに向けて、環境性能が不動産投資に与える影響と、その中で生まれる新たな投資機会について解説します。省エネ基準の義務化から環境認証制度まで、これからの不動産投資に必要な知識を、最新のデータと具体的な事例を交えながらお伝えします。


不動産投資における環境性能の重要性

環境性能は、不動産投資において新たな価値基準として確立されつつあります。

特に2025年度から施行される改正建築物省エネ法は、不動産市場に大きな変革をもたらすことが予想されます。

ここでは、環境性能が重要視される背景と、投資への影響について解説します。

 

 

建築物省エネ法改正の概要と影響

省エネ基準適合義務

出典:住宅:令和4年度改正建築物省エネ法の概要 – 国土交通省

 

2022年6月に成立した改正建築物省エネ法により、2025年度から全ての新築住宅・建築物に省エネ基準への適合が義務付けられます。

国土交通省の発表によると、この改正により以下の変更が実施されます。

 

●小規模建築物(300㎡未満)を含む全ての新築住宅・建築物に省エネ基準適合を義務付け

●建築士から建築主への説明義務の創設

●住宅トップランナー制度の対象拡大と基準強化

●省エネ性能の表示制度の創設

 

住宅トップランナー制度

出典:住宅:令和4年度改正建築物省エネ法の概要 – 国土交通省

 

 

特に注目すべきは、住宅トップランナー制度の拡充です。

この制度は、年間供給戸数が一定数以上の住宅供給事業者に対して、省エネ基準を上回る水準(トップランナー基準)の達成を促す仕組みです。

 

今回の改正では、従来の戸建住宅に加えて、年間1000戸以上を供給する分譲マンション事業者にも対象が拡大されました。

これにより、大手デベロッパーが手がける分譲マンションの省エネ性能が大きく向上することが期待されています。

 

 

市場価値への影響

ESG投資 不動産賃料収入

出典:第 48 回 「不動産投資家調査」(2023 年 4 月現在)の調査結果

 

環境性能が不動産の市場価値に与える影響は、徐々に具体的な形となって表れています。

一般財団法人日本不動産研究所が2022年に実施した「不動産投資家調査」によると、ESG投資に適した不動産とそうでない不動産の賃料収入について、現在は「特に違いはない」(79.5%)という回答が多数を占めています。

しかし、10年後には「1~5%程度高い」(62.9%)とする回答が最多となり、環境性能の重要性が大きく高まると予想されています。

 

以下の記事でも、注目されているESG不動産投資のメリットを紹介しています。

ESG不動産投資の最新動向〜サラリーマンが知るべき持続可能な投資戦略〜|不動産投資クラウドファンディング えんfunding

 

 

省エネ性能が収益に与える影響

環境性能の向上は、単なる社会的責任を果たすだけでなく、具体的な収益改善にもつながります。

主に以下の3つの側面から、投資価値を高める効果が期待できます。

 

<p① 運営コストの削減

省エネ性能の高い建物では、光熱費などのランニングコストを抑えることができます。

国土交通省の「建築物省エネ法の改正」に関する資料によれば、省エネ基準に適合した建物は、旧基準の建物と比べて大幅な光熱費削減が可能とされています。

また、高品質な設備や資材の使用により、長期的な維持管理コストの低減も期待できます。

 

部分断熱改修

出典:部分断熱改修に向けた取組 – 住宅

 

 

② 資産価値の維持・向上

2025年度からの省エネ基準適合義務化に先んじて環境性能を高めることで、将来的な規制強化にも対応できる体制を整えることができます。

また、環境性能の高い物件は、不動産市場での競争力を維持しやすく、長期的な資産価値の維持につながります。

 

 

③ 入居者満足度の向上

省エネ性能の向上は、室内環境の快適性向上にもつながります。

断熱性能の向上による温度変化の緩和や、高効率な空調設備による快適な室内環境の実現は、入居者の満足度を高めます。

さらに、入居者側の光熱費負担が軽減されることで、賃料負担力の向上にもつながる可能性があります。

 

このように、環境性能の向上は単なるコスト要因ではなく、収益性を高めるための重要な投資として捉えることができます。

特に長期的な投資を考えるサラリーマン投資家にとって、環境性能は物件選びの重要な判断基準となっているのです。

 

 

環境性能を評価する仕組み

不動産の環境性能を評価する仕組みは、近年より体系化が進んでいます。

ここでは、日本で主に活用されている3つの評価制度について解説します。

これらの制度を理解することは、投資判断を行う際の重要な指標となります。

 

 

(1)CASBEE(建築環境総合性能評価システム)

CASBEE

出典:CASBEE/一般社団法人 日本サステナブル建築協会(JSBC)

 

CASBEEは、2001年に国土交通省の主導で産官学共同プロジェクトとして開発された日本独自の建築物の環境性能評価システムです。

以下の特徴を持っています。

 

●建築物の環境品質・性能(Q)と環境負荷(L)の両面から総合的に評価

●評価結果は「Sランク(素晴らしい)」「Aランク(大変良い)」「B+ランク(良い)」「B-ランク(やや劣る)」「Cランク(劣る)」の5段階

●新築、既存、改修など、建物のライフステージごとに評価ツールを用意

 

一般財団法人住宅・建築SDGs推進センターのサイトによると、2021年3月31日時点で全国の自治体への届出物件数は累計で約3万件を超えており、環境性能評価の標準ツールとして定着しています。

 

 

(2)DBJ Green Building認証

DBJ Green Building認証

出典:DBJ Green Building認証|金融サービス

 

日本政策投資銀行(DBJ)が2011年に創設した認証制度で、環境・社会への配慮がなされた不動産の評価を行います。

主な特徴は以下の通りです。

 

●5段階評価(5つ星〜1つ星)による格付け

●環境性能に加え、防災やコミュニティへの配慮も評価

●J-REIT(不動産投資信託)保有物件での採用が進む

 

DBJの発表によれば、2024年2月末時点での認証取得物件数は2,150件で、大手不動産会社を中心に認証取得が加速しています。

 

 

(3)ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)

ZEHとは、net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略語で、「エネルギー収支をゼロ以下にする家」という意味になります。

 

断熱性能などを大幅に向上させ、太陽光発電などでエネルギーを創ることで、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目指した住宅です。

経済産業省資源エネルギー庁は、2030年度までに新築住宅の平均でZEH(Nearly ZEH含む)の実現を目標としています。

 

ZEH化率

出典:ZEHの普及促進に向けた今後の検討の方向性について

 

ZEHの定義と判断基準は、経済産業省の「ZEHロードマップフォローアップ委員会」が定めており、以下の要件を満たす必要があります。

 

●外皮性能の大幅な向上(断熱性能の向上)

●高効率な設備システムの導入

●再生可能エネルギーの導入

 

経済産業省の統計によると、2022年度の新築戸建住宅におけるZEH化率は約23%となっており、年々上昇傾向にあります。

2025年のZEH化率50%以上を中期の目標としています。

また、「2030年度までに新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備が設置されることを目指す」という政府目標の達成に向けて、ZEHの普及に向けた取り組みがなされています。

 

この章で解説した、これらの環境性能評価制度は、投資物件を選ぶ際の重要な判断材料となります。

 

 

投資家にできる具体的なアプローチ

環境性能を重視した不動産投資を始めるにあたり、サラリーマン投資家が取れるアプローチをご紹介します。

特に初めての投資では、リスクを抑えながら環境性能の高い物件へ投資できる方法を選ぶことが重要です。

 

環境認証取得物件への投資

環境認証を取得した物件への投資は、比較的リスクの低い選択肢です。

中でもJ-REIT保有物件は、投資対象として注目を集めています。

 

JREIT環境認証取得

出典:BELS、CASBEE 、DBJ Green Building認証について調査J-REIT 全58銘柄の環境性能評価・認証取得状況を公表~竣工年や延床面積、認証ランクに関わらず、積極的に取得の傾向~ | 株式会社HorizonXXのプレスリリース

 

J-REITがホームページで公表しているデータを集計したところ、2023年1月時点でJ-REIT保有物件全58銘柄のうち約7割がいずれかの環境認証を取得しています。

これらの物件は、専門家による厳格な運用・管理が行われており、環境性能の維持・向上が期待できます。

 

また、新築・築浅物件も有力な投資対象となっています。

2025年度からの省エネ基準適合義務化を見据え、特に大手デベロッパーの物件は、将来的な規制強化も考慮した設計となっています。

新築物件は初期投資額は大きくなりますが、長期的な資産価値の維持が期待できます。

 

 

不動産クラウドファンディングの活用

個人投資家にとって、不動産クラウドファンディングは環境配慮型物件への投資を始める有効な手段です。

このプラットフォームでは、1万円という少額から投資を始めることができ、専門家が選定した環境性能の高い物件に投資することが可能です。

 

重要なのは、投資前に運営会社の実績を確認することです。

具体的には、過去の案件における運用実績や、環境性能評価の基準、さらには情報開示の充実度などを確認します。

また、投資対象となる物件の環境認証取得状況や、省エネ設備の導入状況なども重要な判断材料となります。

 

おすすめの不動産クラウドファンディングは「えんfunding

 

以下の記事では不動産クラウドファンディングについて詳しく解説しています。

いま注目の不動産クラウドファンディングの仕組みとは?他の投資との比較やメリットも徹底紹介

 

 

特に重要なのが事業者選びです。

以下の5点に注目して事業者を選ぶようにしましょう。

 

(1)情報開示が適切か

(2)問題が起きた場合の対応

(3)案件数の多さ

(4)不動産の種類が豊富

(5)事業者としての実績、信頼性

 

 

リスクと機会の見極め方

環境性能を重視した投資では、コストと将来性のバランスを慎重に見極める必要があります。

例えば、環境認証の取得や高性能設備の導入には相応のコストがかかりますが、これらは光熱費などの運用コスト削減や、物件の競争力向上につながります。

省エネ基準に適合した建物は、光熱費の削減効果だけでなく、入居者満足度の向上にも寄与していることが報告されています。

 

投資検討時には、その地域における環境規制の動向も重要です。

自治体独自の環境基準や、補助金制度などを確認することで、より有利な投資機会を見出せる可能性があります。

例えば、東京都では、環境性能の高い建築物に対する容積率緩和制度があり、これらの制度を活用した物件は、将来的な価値向上が期待できます。

参照:建築基準法第 52 条第 14 項第1号に基づく 東京都容積率の許可に関する取扱基準

 

このように、環境性能を重視した不動産投資には様々なアプローチが存在します。

最も重要なのは、自身の投資目的や資金力に合わせて、適切な投資手法を選択することです。

 

 

これからの不動産投資戦略

環境性能を重視した不動産投資は、単なるトレンドではなく、今後の不動産市場における重要な判断基準となっていきます。

ここでは、長期的な視点での投資戦略と、具体的な始め方について解説します。

 

 

長期的な視点での物件選び

2025年度からの建築物省エネ法改正は、不動産市場に大きな変化をもたらします。

この変化を見据えた物件選びが、長期的な投資成功のカギとなります。

 

特に注目すべきは、省エネ基準の段階的な引き上げです。

国土交通省は、2030年度に向けて、より厳しい省エネ基準の導入を予定しています。

この動向を踏まえると、現時点で基準を上回る環境性能を持つ物件への投資が、将来的なリスク低減につながります。

 

例えば、すでにZEH基準を達成している物件や、CASBEE評価でSランクを取得している物件は、将来の基準強化にも十分対応できる可能性が高く、資産価値の維持が期待できます。

 

 

サラリーマン投資家が始めやすい投資アプローチ

環境性能の高い不動産への投資は、必ずしも大きな資金力を必要としません。

以下のような段階的なアプローチが有効です。

 

まず、不動産クラウドファンディングを通じた投資から始めることをお勧めします。

1万円という少額から投資できる上、運用会社が環境性能を含めた物件評価を行うため、初心者でも安心して投資を始められます。

 

次のステップとして、環境認証を取得したJ-REITへの投資を検討します。

J-REITは、証券取引所で取引される上場商品であり、投資口の売買が容易です。

また、運用会社による厳格な物件管理が行われるため、環境性能の維持・向上が期待できます。

 

これらの投資経験を積んだ後、実物不動産への投資を検討します。この際、重要なのは以下の点です。

 

環境性能評価の確認

●省エネ基準への適合状況

●環境認証の取得状況

●設備の性能と更新計画

 

立地特性の分析

●環境配慮型物件への需要

●地域の環境規制動向

●自治体の支援制度

 

環境性能を重視した不動産投資は、小さな一歩から始めることができます。

ここで紹介した段階的なアプローチを参考に、ご自身の状況に合った投資方法を選択してみてはいかがでしょうか。

 

 

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