不動産クラウドファンディングの優先劣後方式とは?
不動産クラウドファンディングにおける優先劣後方式とは、投資家の損失リスクを抑えるための仕組みです。
優先劣後方式では、優先出資者である「投資家」と劣後出資者である「事業者」の出資金を分けて扱います。
運用において利益が発生すれば、「投資家」「事業者」ともに利益配分を受け取れます。
そして、優先劣後方式の最大の特徴は、運用において損失が発生した場合、先に劣後出資者である事業者の出資金から損失が補填される点です。
損失が発生しても投資家への償還が優先されるため、投資家は元本割れするリスクが低く、損失を被りにくいといえます。
投資家が損失を被るケースもある
優先劣後方式では、投資家への利益配分や元本の償還が優先されるため、損失リスクは低いでしょう。
しかし、損失額が大きくなれば事業者の出資金だけでは補填しきれず、投資家にも損失が発生することもあります。
たとえば、事業者の出資額が300万円で、450万円の損失が発生した場合、投資家も150万円の損失を被ることになります。
一例
劣後出資者は必ず損するわけではない
投資家の損失を抑えるための仕組みであることから、劣後出資者の事業者は必ず損をしているイメージがあるかもしれません。
しかし、事業者が損失を被るのは、あくまで運用において損失が発生した場合のみです。
利益が1円でも発生すれば損失はないため、出資金は全額償還されることになります。
つまり、劣後出資者である事業者が必ず損をしてしまうわけではありません。
不動産クラウドファンディングで事業者が優先劣後方式を採用する理由
損失が発生した場合、一番に損失を被るのは事業者ですが、それでも優先劣後方式を採用する理由があります。
それは、投資家による出資金の集めやすさです。
不動産クラウドファンディングでは1万円といった小口投資を可能とし、多くの投資家から支持されていますが、リスクはゼロではありません。
そこで、優先劣後方式を導入し、投資家の損失リスクを軽減させ、より多くの投資家から出資を募っているのです。
不動産クラウドファンディングで投資家が優先劣後方式のファンドに投資する3つのメリット
投資家が優先劣後方式を採用している不動産クラウドファンディングに投資するメリットは主に以下の3つです。
(1)元本割れリスクを抑えられる
(2)分配金を受け取りやすい
(3)事業者との利益相反が少ない
それぞれを解説します。
(1)元本割れリスクを抑えられる
優先劣後方式は、元本割れリスクを抑えやすいのがメリットです。
不動産プロジェクトで何らかの問題が発生した場合でも、投資家は事業者よりも先に資金が返還される構造になっています。
これにより、不測の事態が発生しても元本割れのリスクが抑えられ、安定した投資が可能になります。
(2)分配金を受け取りやすい
投資家は、利益が出た際に事業者よりも先に分配金が配分されます。
これは、不動産からの収益が期待される場合だけでなく、収益が少なくなったとしても、優先的にその利益を享受できるため、より確実に収入を得ることができます。
(3)事業者との利益相反が少ない
優先劣後方式では、投資家と事業者で共同出資するため、利益の相反が起こりにくいのが特徴です。
プロジェクトが成功すれば事業者も利益を得ることになるので、プロジェクトの成功に向けた強いモチベーションが働きます。
このように、事業者の利益が直接的にプロジェクトの成果につながっているため、投資家と事業者間の利益相反が少なくなり、より透明で信頼性の高い関係が築かれます。
不動産クラウドファンディングの優先劣後方式で利益が発生した場合
具体的に優先劣後方式で「利益が発生したケース」を、以下の条件で考えてみます。
・不動産を5,000万円で購入
・500万円の利益を予想
・投資家が受け取れる利益配分の上限は300万円
利益が発生したケースを以下の3つに分けて解説します。
【ケース1】予定通りの利益が発生した場合は投資家・事業者ともに利益
【ケース2】予想以上の利益が発生した場合は事業者の利益配分が増える可能性
【ケース3】予想以下の利益が発生した場合は投資家優先で利益配分
それぞれを見ていきましょう。
【ケース1】予定通りの利益が発生した場合は投資家・事業者ともに利益
予定通りの利益が発生した場合、投資家・事業者ともに利益配分を受け取れます。
ほとんどの場合、投資家には受け取れる配当金の上限が設定されており、その上限を超えた利益は事業者へ配分されます。
たとえば、予定通り500万円の利益が発生したとします。
この場合、投資家の利益配分の上限である300万円を受け取り、上限を超えた残りの200万円が事業者へと配分されます。
【ケース1】予定通りの利益が発生した場合は投資家・事業者ともに利益
【ケース2】予想以上の利益が発生した場合は事業者の利益配分が増える可能性
投資家には配当金の上限が設定されているため、上限を超えた配当金に関してはすべて劣後出資者である事業者に配分されます。
そのため、予想以上に多くの利益が発生した場合、事業者への配分割合が増える可能性があり、投資家の利益配分を上回ることも考えられるのです。
たとえば、予想を上回る800万円の利益が発生したとします。
しかし、投資家が受け取れる配当金の上限は300万円であるため、上限を超えた利益である500万円は事業者に配分されます。
したがって、事業者の利益配分が投資家の利益配分を上回ることになります。
このように、事業者は先に損失を被るリスクを背負っているがゆえに、ハイリターンを期待できるのです。
【ケース2】予想以上の利益が発生した場合は事業者の利益配分が増える可能性
【ケース3】予想以下の利益が発生した場合は投資家優先で利益配分
予想していた利益を下回った場合でも、投資家への利益配分が優先されます。
したがって、投資家の利益配分の上限を超えていなければ、事業者は利益配分を受け取れません。
たとえば、予想していた500万円の利益を下回り、200万円しか利益が発生しなかったとします。
この場合、投資家の利益配分の上限である300万円以下におさまっている200万円は、すべて投資家が受け取ります。
そして、事業者には利益配分がなく、出資金の償還のみがおこなわれます。
【ケース3】予想以下の利益が発生した場合は投資家優先で利益配分
不動産クラウドファイティングが優先劣後方式で利益が発生しなかった場合
具体的に優先劣後方式で「利益が発生しなかったケース」を、以下の条件で考えてみます。
・不動産を5,000万円で購入
・投資家の出資額は4,000万円
・事業者の出資額は1,000万円
利益が発生したケースを以下の3つに分けて解説します。
【ケース1】利益が0の場合は出資元本は全額償還される
【ケース2】損失が発生した場合は投資家への元本の返済が優先
それぞれを見ていきましょう。
【ケース1】利益が0の場合は出資元本は全額償還される
利益が発生しなかった場合でも、投資家・事業者ともに出資元本が全額償還されます。
そのため、損失を被ることはありません。
たとえば、不動産を運用後、5,000万円で売却できたとします。
しかし、もともと5,000万円で購入しているため、利益も損失も発生していません。
この場合、投資家には出資した4,000万円、事業者にも出資した1,000万円が償還されます。
このように、利益が発生していなくても損失さえ発生しなければ、元本割れすることはないのです。
【ケース1】利益が0の場合は出資元本は全額償還される
【ケース2】損失が発生した場合は投資家への元本の返済が優先
損失が発生した場合、まずは事業者の出資金で補填していきます。
そのため、事業者の出資額を超える損失でなければ、投資家には出資元本がすべて償還されます。
しかし、事業者の出資額では補填できない損失に関しては、投資家の出資元本からも補填されることになるため、投資家も損失を被ってしまいます。
たとえば、不動産が4,300万円でしか売却できなかったとします。
この場合、損失は700万円です。
しかし、優先劣後方式では先に事業者の出資金から損失を補填するため、投資家には出資元本である4,000万円が償還され、事業者には出資元本から損失分を除いた300万円が償還されます。
ただ、損失が1,500万円というように事業者の出資額である1,000万円を超えた場合、事業者が補填できるのは1,000万円までであるため、残り500万円の損失は投資家の出資金から補填されます。
したがって、投資家への償還額は3,500万円と元本割れを起こしてしまうのです。
【ケース2】損失が発生した場合は投資家への元本の返済が優先:出資額
【ケース2】損失が発生した場合は投資家への元本の返済が優先:償還額
不動産クラウドファンディング業者を選ぶ5つのポイント
優先劣後方式を採用している不動産クラウドファンディング業者について、主に選ぶポイントは以下の5つです。
(1)劣後出資の割合が高い
(2)最低投資金額が低い
(3)取扱い案件数が豊富
(4)物件情報を詳細まで開示している
(5)事業者の経営が安定している
をそれぞれをご紹介します。
(1)劣後出資の割合が高い
不動産クラウドファンディング業者では、それぞれ劣後出資の割合が設定されており、一般的には20%前後です。
ただ、劣後出資の割合が高ければ高いほど、投資家が被る損失リスクは低いため、劣後出資の割合が高い業者を選ぶとよいでしょう。
たとえば、劣後出資の割合が10%の業者を通じて5,000万円の不動産を購入する場合、投資家は4,500万円、事業者は500万円出資することになります。
そして、1,000万円の損失が発生してしまった場合、事業者の500万円に加えて、投資家からも500万円の補填が必要です。
しかし、劣後出資の割合が30%だったとします。その場合、投資家は3,500万円、事業者は1,500万円出資することになります。
そして、上記の例と同じく1,000万円の損失が発生した場合でも、事業者の出資額である1,500万円の損失までは事業者によって補填されるため、1,500万円におさまっている1,000万円の損失を投資家が被ることはありません。
このように、劣後出資の割合が高ければ高いほど、投資家の損失リスクは低いといえます。
(2)最低投資金額が低い
小口投資が可能なのは、不動産クラウドファンディングのメリットでもあります。
投資にはリターンが期待できる反面、背負うリスクも少なくありません。
そのため、初心者の方でも気軽に投資できるよう、最低投資金額が低い業者を選ぶとよいでしょう。
多くの業者では1万円からの投資が可能です。
最低投資金額が低い業者は、とくに「リスクが少ない投資をしたい」と考える方におすすめできます。
(3)取扱い案件数が豊富
業者によって取り扱う案件数が異なるうえ、不動産の種類もさまざまです。
投資するのに適した不動産を見つけるためにも、取り扱い案件数が豊富な業者を選ぶことが大切です。
また、不動産クラウドファンディングには低リスクで小口投資が可能なため、多くの投資家が集まります。
そのため、事業者は「先着」や「抽選」方法で申込を募ります。
つまり、投資したい不動産が見つかっても、先着順や抽選によっては投資できない場合があるのです。
このように、「投資したい不動産を見つけるため」や「先着や抽選での高倍率を突破するため」にも、取扱い案件数が豊富な業者をおすすめします。
(4)物件情報を詳細まで開示している
ほとんどの業者では投資対象となる不動産の情報を開示していますが、その情報量は業者によって異なります。
投資する不動産を選ぶ際、物件情報が多いと比較や判断がしやすいでしょう。
そのため、物件情報を詳細まで開示している業者がおすすめです。
物件情報には以下のような内容が含まれます。
・住所
・築年数
・使用目的(住居や事務所など)
・間取り
・専有面積
・家賃
・管理費
・修繕積立金
・入居者の有無
・駐車場の有無
・施工会社・運営会社
・(物件ごとの)分配率
・過去の修繕履歴
(5)事業者の経営が安定している
経営が安定していない事業者が運営する不動産への投資は、リスクが高いといえます。
出資後に事業者が倒産してしまえば、出資元本が返済される保証もありません。
そのため、事業者の信頼性を確認する必要があります。
事業者に関して以下の内容を把握できることが理想です。
・事業内容
・事業規模
・資本金
・経営状況
・上場の有無
・不動産運用に関するノウハウの有無
上記のような情報は、事業者のホームページなどで公開されていることがほとんどです。
業者を比較する際は、事業者の信頼性に関する情報を収集したうえで検討しましょう。
優先劣後方式が損失リスクを低くする
不動産クラウドファンディングにおける優先劣後方式は、投資家の損失リスクを低くするための仕組みです。
投資家が優先劣後方式を採用している不動産クラウドファンディングに投資するメリットは以下の3点でした。
(1)元本割れリスクを抑えられる
(2)分配金を受け取りやすい
(3)事業者との地益相反が起こりにくい
事業者にとっても多くの投資家を集められるというメリットがあります。
ただ、損失の額によっては投資家も損失を被る場合もあるため、仕組みを理解したうえで不動産クラウドファンディングをはじめましょう。
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