地方都市を取り巻く空き家と過疎化の問題
地方の空洞化が進む一方で、地方創生への取り組みが本格化しています。
ここでは、地方都市が直面している課題を最新データから理解し、その課題が不動産投資家にとってどのような機会となるのかを探ります。
地方が直面する課題と実態
出典:令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果
地方都市は今、かつてない困難な状況に直面しています。
2023年の統計によると、全国の空き家数は約900万戸に達し、空き家率は13.8%と過去最高を記録しました。
特に深刻なのが地方部で、和歌山県と徳島県では空き家率が21.2%、山梨県では20.5%に上ります。
一部の過疎地域では、実に3軒に1軒が空き家という地域も存在します。
出典:統計局ホームページ/住民基本台帳人口移動報告 2023年(令和5年)結果
この背景には、進む人口流出の問題があります。
特に若年層の東京圏への流出が顕著で、15歳〜29歳の若者の2023年の東京への転入超過数は10万3,201人に達しています。
この「人口流出→地域経済の縮小→さらなる人口流出」という負のスパイラルが、地方都市の活力を奪っているのです。
課題から生まれる投資機会
しかし、このような厳しい状況は、不動産投資家にとって新たな機会をもたらしています。
(1)物件取得コストの優位性
空き家の増加により、物件の取得コストは都市部と比べて大幅に低くなっています。
例えば、地方都市の空き家は不動産市場価格の5~8割程度で取得できるケースも多く、初期投資を抑えた参入が可能です。
(2)充実した政府支援策
地方創生の観点から、様々な支援制度が整備されています。
例えば、岡山市では空き家のリフォーム費用の3分の1(上限50万円)を補助する「空家等適正管理支援事業」を実施しています。
また、鳥取県倉吉市では、市内在住の39歳以下の人や県外在住の人が空き家を購入する場合、最大30万円の助成金を受けられます。
(3)新たなニーズへの対応
地方都市では、従来の賃貸住宅だけでなく、以下のような新しいニーズが生まれています。
●テレワーカー向けのワーケーション施設
●地域コミュニティの交流拠点
●観光客向けの体験型宿泊施設
●起業家支援のためのシェアオフィス
中でも地方の別荘地エリアの地価上昇のトレンドには、ワーケーションの普及による影響もあると言われています。
例えば、軽井沢町の代表的な住宅地の地価は、2023年に前年比10%以上の上昇となりました。
ワーケーションと不動産投資についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
これらのニーズは、空き家や遊休不動産を活用した新しいビジネスモデルを生み出す可能性を秘めています。
(4)ESG投資としての価値
一般財団法人日本不動産研究所の調査によると、ESG(環境・社会・ガバナンス)に配慮した不動産投資は、10年後には通常の不動産と比べて1~5%程度高い賃料収入が期待できるとされています。
地方創生に貢献する不動産投資は、まさにこのESG投資の要素を含んでおり、社会的価値と経済的価値の両立が期待できます。
ESG不動産投資についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
このように、地方都市が抱える課題は、適切な戦略と創意工夫により、魅力的な投資機会へと転換できる可能性を秘めています。
地方創生型不動産投資の3つの形態
地方創生に貢献する不動産投資には、様々なアプローチ方法があります。
ここでは、特に注目される3つの投資形態について、それぞれの特徴や具体的な事例を交えながら解説していきます。
(1)空き家活用型投資
空き家の再生は、最も一般的な地方創生型不動産投資の形態です。
この手法は、低コストで物件を取得し、リノベーションによって新たな価値を生み出すアプローチです。
特に注目されているのが、古民家を活用した宿泊施設への転換です。
まちのなかに点在する重要伝統的建造物に代表されるような歴史的建造物の他、以前は住居や商業などに利用されていた古民家等を活用してフロント棟、宿泊棟及び食堂棟などとして改修し、まち全体、集落全体を一つのホテルと見立てた宿泊施設を分散型宿泊施設と呼びます。
分散型宿泊施設の新規開業件数は2018年の旅館業法改正を受けて近年増加傾向にあり、その累積件数は、2023年12月時点で44件に達しています。
一般的な宿泊施設と比べて、地域の歴史や文化を体験できる付加価値が評価され、高い稼働率を実現している事例が多くあります。
また、空き家をサテライトオフィスに転換する例も増えています。
コロナ禍以降、地方でのテレワークニーズが高まり、都市部の企業による利用が増加しています。
(2)コミュニティ創造型投資
この投資形態は、地域コミュニティの活性化を目的とした施設の運営を行います。
具体的には以下のような活用方法があります。
シェアハウス展開・・・若者や移住者向けの共同生活施設を整備し、入居者同士の交流を促進する共用スペースを設置することで、コミュニティの形成を図ります。
さらに、地域住民との交流イベントを定期的に開催することで、入居者と地域との結びつきを深め、地域活性化にも貢献しています。
多目的コミュニティスペース・・・カフェやコワーキングスペースを併設することで、日常的な利用者を確保します。また、施設を地域の交流イベントの開催場所として提供することで、地域住民の活動拠点としての役割も果たしています。
さらに、この空間を活用して高齢者と若者の世代間交流を促進することで、地域コミュニティの活性化に寄与しています。
特徴的なのは、単なる居住空間や作業場所としてだけでなく、地域コミュニティの核となる施設として機能することで、安定した需要を確保できる点です。
(3)産業支援型投資
地域の産業振興に寄与する施設への投資は、行政からの支援を受けやすく、地域経済への波及効果も期待できます。
具体的な展開例
●起業家育成施設(インキュベーション施設)
●地場産品の直売所や体験施設
●観光案内所と連携した情報発信拠点
●地域の特産品を活かしたレストラン
和歌山県の農産物直売所「秋津野ガルテン」は、地域の産業振興に寄与する施設への投資の好例です。
この施設は、廃校となった小学校の木造校舎を改修して2008年11月に開設されました。
地元住民が主体となって約3,000万円を出資し、農林水産省の補助金も活用して総事業費1億1,000万円で整備されました。
ここでは、地域で採れた食材を使用したバイキング料理を提供する農家レストランや、みかんの収穫体験やジュース作り体験など、年間を通じて様々な農業体験を提供しています。
他にも市民農園と併用した長期滞在や各種研修の宿泊や、経済産業省の支援を受けた地域リーダーの育成を目的とした研修プログラムを実施しています。
これらの取り組みにより、秋津野ガルテンは年間売上高2億円を見込む施設に成長し、地域経済の活性化に大きく貢献しています。
また、観光客の誘致にも成功し、修学旅行生の受け入れも計画しています。
このように、地方創生型不動産投資は、単なる不動産賃貸業にとどまらず、地域の課題解決と収益確保を両立する新しいビジネスモデルを生み出しています。
投資家には、地域のニーズを的確に捉え、その特性を活かした運営戦略を構築することが求められます。
新しい参入方法としての不動産クラウドファンディング
地方創生型の不動産投資は魅力的な機会を提供する一方で、物件の取得や運営には専門知識や多額の資金が必要です。
ここでは、サラリーマン投資家でも参入しやすい新しい投資手法として、不動産クラウドファンディングを紹介します。
(1)少額から始める地方創生投資
不動産クラウドファンディングは、インターネットを通じて多くの投資家から資金を集め、不動産事業に投資する仕組みです。この投資手法には以下のような特徴があります。
●少額からの投資が可能
従来の不動産投資では数千万円規模の資金が必要でしたが、クラウドファンディングでは1万円から投資を始めることができます。
これにより、サラリーマン投資家でも無理のない範囲で地方創生プロジェクトに参加できるようになりました。
●専門知識が不要
物件の選定や管理はプロの運営会社が行うため、投資家自身が不動産の専門知識を持つ必要がありません。
地域の調査や物件の維持管理といった手間も不要です。
●リスク分散が可能
少額から投資できる特徴を活かし、複数の物件に分散投資することでリスクを抑えることができます。
地域や用途の異なる物件に投資することで、より安定的なポートフォリオを構築できます。
不動産クラウドファンディングについては以下の記事で詳しく解説しています。
不動産クラウドファンディング市場拡大中!その理由とメリット・デメリットを解説
今までの不動産投資とは異なり、オンラインプラットフォームを利用して投資ができることで、より多くの投資家が取引に参加できるようになりました。
(2)クラウドファンディングの活用事例
地方創生に関連する不動産クラウドファンディングでは、以下のような投資案件が登場しています。
●古民家再生プロジェクト
歴史的価値のある古民家を宿泊施設にリノベーションするプロジェクトです。
観光振興と街並み保全の両立を図りながら、安定した収益を目指します。
・活用事例
「BATSUNAGU」(全国各地)
クラウドファンディングを活用した空き家再生が人気 地方創生・古民家再生ファンド、運用開始から相談件数300%増│CrowdFunding Channel
空き家・古民家を活用した地方創生事業を展開しています。
北海道の古民家をサウナ、宿泊施設、カフェ&バーなどの複合施設へ再生した事例があります。
●地域活性化施設
空き店舗を活用したコワーキングスペースや、地域の特産品を扱うアンテナショップなど、地域経済の活性化に貢献する施設への投資案件です。
・活用事例
「つながる図書館」プロジェクト
【成功例6選】クラウドファンディングで地域活性化を成功させた事例をご紹介!
図書館、カフェスペース、コワーキングスペースなどを融合させた施設を作るためのクラウドファンディングを実施し、150万円以上の支援を集めました。
このように、不動産クラウドファンディングは、地方創生への貢献と資産運用を両立させたい投資家にとって、新しい選択肢を提供しています。
特に、時間や資金に制約のあるサラリーマン投資家が地方創生に関わるための有効な手段となっているのです。
地方創生から広がる資産形成の未来
地方創生型不動産投資は、社会課題の解決と収益確保を両立できる新しい投資アプローチとして注目を集めています。全国で900万戸に達する空き家、13.8%という過去最高の空き家率は、確かに深刻な社会問題です。
しかし、これらは投資家にとって新たな機会でもあります。
地方都市の不動産は、都市部と比べて取得コストが低く、行政による支援策も充実しています。
また、空き家活用型、コミュニティ創造型、産業支援型といった多様な投資形態があり、それぞれの地域特性や投資家の目的に応じた展開が可能です。
特に注目したいのは、不動産クラウドファンディングの登場です。
この新しい投資手法により、専門知識や多額の資金がなくても、1万円から地方創生プロジェクトに参加できるようになりました。
時間的制約の多いサラリーマン投資家でも、自身の収益性を追求しながら、地域活性化に貢献できる道が開かれているのです。
地方創生型不動産投資は、単なる収益追求の手段ではありません。
それは、地域の課題解決に貢献しながら、持続可能な形で収益を生み出す新しい投資の形です。
投資家には「地域のために何ができるか」という視点を持ちながら、長期的な視野で投資に取り組むことが求められています。
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