入居者の退去で何が起きるのか、全体像を時系列で把握する
入居者の退去から次の入居者が決まるまでの期間は、一般的に2〜4ヶ月程度かかると言われています。この期間中、大家の身に起きることは大きく分けて5つのステップに整理できます。
(1)退去から再入居までの5つのステップ

入居者の退去から次の入居者決定までは、以下の5つのステップで進みます。
1.解約通知の受領
2.退去日の立会い
3.原状回復工事・リフォーム
4.新規入居者の募集
5.新規契約の締結
この一連のプロセスでは、大家本人、管理会社、退去する入居者、そして新たに入居する人という4者がそれぞれ動きます。
(2)収入ゼロでも固定費は止まらない
注意したいのは、この2〜4ヶ月の間、家賃収入はゼロになるという点です。
一方で、ローン返済、管理費、修繕積立金、固定資産税といった固定費は止まりません。さらに原状回復やリフォームのための一時的な支出も発生します。
解約通知から退去立会いまでの動き
退去のプロセスは、入居者からの解約通知によって始まります。多くの賃貸借契約では、退去日の1ヶ月前までに通知することが定められており、この通知を受け取った時点で大家側の準備期間がスタートします。
(1)通知を受けた直後にやるべき3つのこと

解約通知を受けた直後にやるべきことは、以下の3つです。
1.管理会社と連携して次の入居者募集の準備に入る
2.原状回復を担当する業者の手配を検討する
3.空室期間中のキャッシュフローを再点検する
本業が忙しいことを理由にこの初動が遅れると、空室期間が無駄に長引き、機会損失が拡大します。
(2)退去立会いでチェックされるポイント
退去日当日には立会いが行われ、原状回復の範囲を退去者と大家側で確認します。
立会い自体は管理会社に任せるケースが一般的ですが、高額な修繕が予想される物件や、入居期間が長く損耗が大きいと想定される場合は、オーナー自身が参加することも検討すべきです。
立会いでは壁紙の汚れ、床の傷、水回りの状態、設備の動作などがチェックされます。タバコによるヤニ汚れ、ペットによる傷、結露を放置したことによるカビなどは、退去者負担になるかどうかでトラブルになりやすいポイントです。
原状回復における大家負担と入居者負担の線引き

原状回復は、退去フェーズで最も金額が動き、かつトラブルが起きやすい局面です。2020年4月施行の改正民法によって、原状回復義務の範囲が法律上明文化され、判断基準が以前より明確になりました。
(1)民法改正で明確化された判断基準
基本原則は、通常損耗および経年劣化は大家負担、故意・過失・善管注意義務違反による損耗は入居者負担というものです。
国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が実務上の判断基準として広く参照されています。
具体的には、家具を置いていた跡の床のへこみや、日光による壁紙の日焼け、設備の自然な経年劣化などは大家側の負担となります。一方、タバコのヤニによる壁紙の変色、ペットによる柱の傷、掃除を怠ったことによる水回りのカビなどは入居者負担になり得ます。
(2)費用相場と敷金で足りないケース

出典:不動産投資の原状回復費用を徹底解説|オーナー負担の相場と適正化のポイント | 株式会社アソーク
費用相場の目安は、ワンルームで15〜30万円、ファミリータイプで30〜80万円程度です。これはあくまで一般的な目安であり、入居期間や使用状況によって大きく変動します。
注意すべきは、敷金で全額をまかなえるケースばかりではないという点です。敷金1ヶ月分が預かり金として設定されている物件では、原状回復費用が敷金を上回り、不足分を大家が持ち出すことも珍しくありません。
リフォームから新規契約までの流れ
原状回復が義務として行う最低限の修繕であるのに対し、リフォームは次の入居者を獲得するための投資判断として行うものです。
両者の違いを意識せずに見積もりを受け取ると、管理会社の提案にそのまま従って過剰な出費をしてしまうことがあります。
(1)リフォーム投資の回収を見極める

競合物件に勝つためのリフォームには、エアコンの更新、独立洗面台の設置、無料インターネットの導入、温水洗浄便座への交換などが挙げられます。
これらは家賃を一定額引き上げる効果や、空室期間を短縮する効果が期待できますが、投資回収には何年もかかる場合もあります。
家賃を月3,000円引き上げられる見込みで20万円のリフォームを行えば、回収には約5年半が必要という計算になります。
(2)空室期間を埋める3つの手段
再募集のフェーズでは、空室期間が最大の変数になります。都市部のワンルームで平均1〜3ヶ月、地方や築古物件ではさらに長引くこともあります。空室を埋めるための手段は、大きく以下の3つに分けられます。
1.家賃を下げる
2.初期費用を下げる
3.設備を強化する
管理会社からは家賃の引き下げを提案されることが多いですが、一度下げた家賃は次の更新時にも引きずられるため、安易な決定は長期的な収益を損ないます。
(3)新規契約でようやくキャッシュフローが再開する
新たな入居者が決まり契約に至ると、ようやくキャッシュフローが再開します。
礼金を設定している物件であれば一時的な収入も発生しますが、仲介手数料として管理会社や仲介会社に支払う費用も同時に発生するため、手取りベースでの計算が必要です。
退去サイクルが実質利回りに与えるインパクト
物件購入時に算出した表面利回りや実質利回りに、退去コストを組み込んで再計算してみると、数字の見え方は大きく変わります。
(1)ワンルーム1戸のシミュレーション

一般的に賃貸住宅の平均入居期間はワンルームで2〜4年程度と言われており、ここでは保守的に2年に1回として試算します。
たとえば家賃8万円のワンルームで2年に1回退去が発生し、空室期間が2ヶ月、原状回復の大家負担分が10万円、簡易リフォームに15万円かかると仮定します。
この場合、2年あたりの退去関連コストは、家賃逸失16万円と原状回復・リフォーム25万円を合わせて41万円となります。
年換算では約20万5,000円のマイナスインパクトです。年間家賃収入96万円に対してこの金額が乗ると、想定していた利回りからは1〜2ポイント以上低下することも珍しくありません。
(2)表面利回りではなく実質収支で判断する
つまり購入時のシミュレーションに退去コストを織り込んでいないと、実際の手取りは想定を下回ります。
投資判断では、満室を前提にした表面利回りではなく、退去サイクルを反映した実質収支で物件を評価することが欠かせません。
副業大家として退去サイクルを回せるかを冷静に判断する
ここまで読んで、退去フェーズで大家がやるべきことの多さに驚いた方もいるかもしれません。
(1)本業との両立で生じる判断遅延のリスク
実際、退去から再入居までの間、オーナーには電話対応、見積もりの確認、業者との調整、振込手続き、家賃設定の判断など、細かな意思決定が連続します。
管理会社に任せられる部分は多いものの、最終的な判断と支払い責任はオーナー本人が負います。本業が繁忙期と重なるタイミングで退去が発生すると、判断が遅れて空室期間が伸び、キャッシュフローが悪化するリスクもあります。
(2)1戸保有では分散できない空室リスク
さらに区分マンション1戸のみを保有している場合は、退去が発生した瞬間に家賃収入がゼロになり、ローン返済を給与から補填する必要が出てきます。
実物投資1戸では、空室リスクを分散できないという構造的な弱点があるのです。
実物投資の代替・補完としての不動産クラウドファンディング
ここまで読んだうえで、副業として実物投資を本格的に始めることに迷いを感じた方もいるかもしれません。退去対応や原状回復の判断に自信が持てない、本業との両立が難しそうだと感じた方には、不動産クラウドファンディングという選択肢があります。
(1)運営の手間を事業者に委ねられる仕組み
不動産クラウドファンディングは、複数の投資家から少額ずつ資金を集めて事業者が不動産を運用し、賃料収入や売却益を投資家に分配する仕組みです。
物件の選定、入居者の募集、退去対応、原状回復の判断といった運営業務はすべて事業者が担うため、投資家は退去のたびに発生する作業や判断から解放されます。
1万円程度から投資できる案件も多く、複数案件に分散することで空室リスクや地域リスクも分散できます。
不動産クラウドファンディングについては、以下の記事で詳しく解説しています。

いま注目の不動産クラウドファンディングの仕組みとは?他の投資との比較やメリットも徹底紹介
(2)実物投資との併用や段階的なステップアップ
実物投資とクラウドファンディングは、どちらか一方を選ぶというよりも、自分のライフスタイルや資産規模に応じて組み合わせる発想が有効です。
本業が忙しい時期はクラウドファンディングを中心に据え、将来的に時間や資金に余裕ができたら実物保有にステップアップするという段階的なアプローチも考えられます。
あるいは、いきなり数千万円のローンを組む前に、まずクラウドファンディングで不動産投資の感覚を掴むという入口の使い方もあります。
自分に合った不動産投資の関わり方を選ぶ
今回の記事で解説してきた内容を、あらためて整理します。
●入居者の退去から次の入居決定までは平均2〜4ヶ月、その間も固定費は止まらない
●原状回復・リフォーム・空室期間は実質利回りを大きく押し下げる
●副業大家は本業との両立や1戸保有の空室リスクに注意が必要
入居者の退去は、不動産投資において最も大家の手間とコストがかかる局面です。このサイクルを正しく理解したうえで、自分のライフスタイルや投資目的に合った関わり方を選ぶことが、長期的な資産形成の近道です。
現物保有が自分に合うのか、運営の手間を抑えた不動産クラウドファンディングから始めるのか、両者の特性を比較したうえで判断することをおすすめします。
なお、現物投資を選ぶ場合は、入居率の高い物件選びと管理会社選びが成功の鍵となります。あわせて以下の記事もご参照ください。

賃貸物件の原状回復とは?退去時のコストを下げて、お得に暮らす4つのポイントを解説
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